日本でもKポップの再ブームでKビューティ(韓国のビューティ)の人気に再び火が付いているが、米国でも空前のKビューティブームだ。2018-19年秋冬ニューヨーク・コレクション取材の合間に百貨店やセフォラ(SEPHORA)、ドラッグストアに訪れ現地調査を試みたが、やはりどこに行っても “Kビューティ”の人気が一目瞭然だった。
2017年9月に大型旗艦店をオープンした「イニスフリー(INNISFREE)」は夜遅い時間帯だったにもかかわらず店内は多くの人で賑わっていた。メイクアップはもちろん、スキンケアを種類豊富にそろえている同店では、ほとんどの客が店員にスキンケアのアドバイスを聞いていた。セフォラでは “Kビューティ”専用のコーナーがあり、「ラネージュ(LANEIGE)」「アモーレ パシフィック(AMORE PACIFIC)」「ドクター ジャルト(DR. JART+)」「ビリーフ(BELIF)」などを集積。Kビューティだけを扱うECサイト「グロウ レシピ(GLOW RECIPE)」のオリジナルコスメも置いてあった。この「グロウ レシピ」はスイカを使用したスリーピングマスクが昨年大ヒット。かわいいパッケージがSNSで一気に拡散され、さらに口コミで評判が広まり、公式サイトで8回、セフォラで5回完売するほどで、一時期は5000人以上がウェイトリスト(入荷待ち)に登録していたほどだという。若年層に人気のアパレルショップ「アーバン アウトフィッターズ(URBAN OUTFITTERS)」にはフェイスマスクだけを集めたラックがあったり、韓国の人気スキンケアブランド「コスアールエックス(COSRX)」を販売したりしていた。
なぜ、そもそもメイクの趣向や肌質が全くことなる米国で韓国のビューティブランドが人気なのか。Kポップの影響はもちろん、SNSの普及で世界中のビューティ情報を手にいれられる時代に、メイクアップはインスタ映えするキャッチーなパッケージやクッションファンデ、眉ティントといった面白いアイデアの商品が人気を集めている。一方でスキンケアに関しては、米国ではアジア諸国に比べ肌に費やすお金や時間は圧倒的に少なく、クレンジングした後に乳液でケアを終わらせるのも稀ではない。そんな中ダブルクレンジングした後に化粧水、美容液、シートマスク、乳液、アイクリームとたくさんの工程を要する韓国のスキンケアメソッドがかえってユニークで話題を呼んだのだ。日本や韓国では当たり前の手入れが、海外では“アジア人の綺麗な肌の秘訣”として面白がられ、今ブームとなっているようだ。
日本と美容の文化が異なる米国だが、ファッションブランドが苦戦する中でビューティブランドが好調なのは一緒だ。Kビューティを筆頭にアジアのビューティブランドに注目が集まる中、最近米デジタル系企業を次々と買収している資生堂など、日本の企業にも期待をしたい。