ファッション

フリマで“売ることを前提にモノを買う”時代、アパレルは何をすべきか

 メルカリが4月、慶應義塾大学大学院経営管理研究科の山本晶・准教授監修のもと実施した「消費行動と意識の変化」に関する意識調査の調査結果発表とともにセミナーを開催した。意識調査では全国のフリマアプリ利用者500人・非利用者500人の合計1000人を対象に調査を実施。その結果、20代の半数(53.5%)が中古品を購入して使用することに抵抗を感じないと回答した。

 調査結果で驚くべきは、若年層の購入における意識の変化だろう。フリマアプリ利用者のうち半数以上が、「新品を購入する前にフリマアプリで値段を調べる」「売るときのことを考えてモノを大切に扱う」と回答している。なぜフリマアプリを利用するのか、という質問に対しては、「掘り出し物を探すワクワク感があるから」「中古品購入の場が増えたから」という回答が最も多かった。結果からは“売ることを前提にモノを買う”という消費行動が明らかになったようだ。

 2次流通を考える上でまず大切なことは、それが1次流通(小売り)と競合する、また、とって代わるものではないということだ。以前、レンタスサービスを展開する天沼聰エアークローゼット最高経営責任者(CEO)が児玉昇司ラクサス・テクノロジーズ社長との対談において、「店頭での買い物、移動時間をなくしたECでの買い物、そして選ぶ時間までをもなくしたレンタルサービスという選択肢。どれが正しいといったゼロイチの問題ではなく、時間の使い方に対する考え方の問題だ」という考えを強調していた。「ゾゾユーズド(ZOZOUSED)」を運営するクラウンジュエルの宮澤高浩・社長も、「成長著しいファッションリユース業界だが、二次流通だけで盛り上がることは難しい」と考える。メルカリのセミナーに登壇した女子大生社長としても有名なハヤカワ五味・ウツワ社長も、「新品離れというより、もともと新品で買うしかなかった選択肢に中古という選択肢が増えた」と話したのが印象的だった。

 事実、エアークローゼットはユナイテッドアローズといったセレクトショップ複数社と提携をしているし、「ゾゾユーズド」もストライプインターナショナルが運営するレンタルサイト「メチャカリ」との連携を実現するなど、両市場はお互いを支え合う形で成長しているのが現状だ。最近ではアパレル大手のワールドがブランド中古ビジネスのラグタグとレンタルサービス「サスティナ」を買収するなど、間違いなく両市場の合従連衡が加速している。

 では、“売ることを前提にモノを買う”という時代背景に合わせて、アパレル業界はどうすればいいのだろうか。そのヒントとなる考えも2次流通業社への取材から見えてきたように思う。まず、メルカリのセミナーで小泉文明メルカリ社長と対談した山本准教授は、「再販されることを前提に“リセールバリューを意識したブランド作り”が大切だと思う。例えば、商品自体のストーリーやクオリティーを上げること以外にも、アフターサービスの充実など、企業としてやれることはあるはず」という考えを述べた。僕はこれを「長く使っても価値が下がらないモノ作り・購入後のケアをすべきだ」という意味に捉えた。

 この考えは2次流通業社のだれもが持っている。先の天沼社長も自社の立ち位置について、「私はモノ作りを非常に尊敬している。シェアリングはモノと人のマッチングだが、モノ作りをしている事業者が自ら顧客との出合いを探すのは非合理。彼らはモノ作りに集中すべきで、マッチング部分はわれわれに任せてもらえればいい」と話している。クラウンジュエルの宮澤社長も「そもそも、ずっと使い続けられる商品作りをしているブランドが少ない」というアパレル業界の課題を指摘する。

 とあるアパレル業界の決算が不振だったというニュースに対して、ハヤカワ五味・社長が「妹いわく、『メルカリ』で売れなさそうな商品は買わないそうだ」というコメントをしていたのだが、ここに全てが集約されているような気がした。2次流通の隆盛がアパレル業界にとって新しい相利共生を築くチャンスと捉える一方で、2次流通が“安かろう悪かろう”というアパレル市場にある一部の流れを断ち切ろうとしているのも事実で、消費者はシェアリング・エコノミーとともにこうしたアパレル業界のモノ作りにまできちんと目を向けられるようになったのだと思う。こうした2次流通企業(加えて、シェアリング時代の消費者)の考えに耳を傾ければ、自ずとアパレル業界が目指すべき次の方向性が見えてくるように感じる。

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