2018-19年秋冬パリ・ファッション・ウイークで「WWDジャパン」チームは100以上のブランドを取材し、紙やウェブ、セミナーなどで情報を発信してきました。それでもあまりの量に伝えきれていない情報もあるので、今回は自他共にシューズラバーと認める記者がパリで出合った2つのシューズブランドを前後編で紹介していきます。
1つ目に紹介したいブランドは「ズィーン(ZYNE)」です。疲労もたまってきた出張7日目の朝10時にアポイントメントを入れてしまったことを多少悔やみながら、指定された住所へ向かうと普通の家が並んでいました。窓からはリビングルームのような部屋がうっすらと見えます。場所を間違えたかな……と思いながらも恐る恐るチャイムを鳴らすと、笑顔で温かく迎え入れてもらえました。
そこで目に飛び込んできたのは色鮮やかなバブーシュの数々です。ビーズ刺しゅうやビジューなどを全面にあしらったバブーシュが部屋一面にディスプレーされていました。
詳細を聞くと、モロッコのブランドでバブーシュは全てハンドメード。価格帯は200~600ユーロ(約2万6000~7万9000円)程度とのこと。1年半前に立ち上げたばかりの新進気鋭のブランドであるにもかかわらず、英「ヴォーグ(VOGUE)」などのファッション誌で取り上げられ、米百貨店のバーグドルフ・グッドマン(BERGDOLF GOODMAN)やネッタポルテ(NET-A-PORTE)が買い付けているそうです。実際に私が取材中もカナダの百貨店のバイヤーと名乗る女性が会場を訪れ、シューズのクオリティーの高さを絶賛していました。
ソールまできちんと作りこんでいる「ズィーン」は、モロッコ人のズィネーブ・ブリテル(Zineb Britel)が手掛けるブランド。エスモード パリ(ESMOD PARIS)でファッションデザインを学んだ後、「クリスチャン ディオール(CHRISTIAN DIOR)」や「ソニア リキエル(SONIA RYKIEL)」で経験を積んだという経験の持ち主で、細かい刺しゅうのクオリティの高さはクチュールメゾンでの経験に裏打ちされたものなのだと納得しました。さらに、その後もロンドンのセント・マーチン美術大学MA(CENTRAL SAINT MARTINS MA)などで勉強し直すという勉強家でもあるようです。
日本には未上陸ですが、アジア圏への進出は目標の1つだと話していたので、一日も早く上陸してくれることを期待したいブランドです。