韓国で人気の「空港ファッション」をご存知だろうか。アイドルや俳優など韓流スターを空港で撮ったパパラッチフォトのことで、リアルクローズのお手本として絶大な人気がある。日本のヤフーに相当する韓国の検索サイト、ネイバー(NAVER)には写真をまとめるネイバーフォトというサービスがあり、そのカテゴリー内にも「空港ファッション」が入っている。あらゆるメディアが撮影したスターの私服写真が集められており、注目している人が多いのだ。そのためスターたちも撮られることは了承済み。服もヘアもばっちりとキメて現れ、カメラに向かって笑顔でポーズを決めている。マスクにキャップをかぶり、顔を隠しながら出てくる日本のアイドルと比べれば“パパラッチ”というよりイベント写真のようだ。
参考にするといっても、雑誌と違いクレジットはない。しかしSNS上で検索すれば、あっという間にどこのブランドか知ることができるだろう。インスタグラムでは「空港ファッション」の韓国語ハッシュタグをつけた写真が25万件以上も投稿されているが、さまざまなアカウントがパパラッチフォトを使用し、出回って数日以内にはブランドの特定を済ませている。着用したすべてのアイテムを特定するアカウントは少ないが、数投稿見て回れば大体のアイテムはどこのものか知ることができた。例えば仁川国際空港で撮られた少女時代のユナの写真は、ブランドのみならず服の値段、撮影場所、日にちまで詳細に記載されている。
空港に現れるアイドルには飛行機に乗ってきたとは思えないほど整った服装の人も多いので、撮られる意識を持っていることはファンも理解している。それでも大半のファンは私服を着ていると思って見ているのだが、韓国ファッションビジネスに精通した人物によれば、実はブランドが提供する服、つまり衣装がほとんどだという。着用を依頼する金額は5万円程度と広告費としては格安で、有名ブランドである必要もない。ファンが広告だと気がつかないのは、1ブランドが全身の衣装すべてを提供しているわけではなく、私物など他ブランドのアイテムと掛け合わせているからだ。
また、写真は事務所の承諾なしに掲載することができるため、空港にはウェブサイトに写真をアップして稼ぐカメラマンが300人も待機しているという。この写真がSNSで拡散されて反響を呼ぶわけだが、中にはアイドルの着用によって1アイテムが1週間で400万円も売れたブランドもあるという。まさに“コリアン・ドリーム”だ。
もちろんテレビでもライブでも、韓流スターが着用したものは人気が出るものだ。しかし、さまざまなブランドを掛け合わせ、街中でも浮かないリアルクローズである「空港ファッション」は、単なる憧れに終わらず購買意欲をそそるのではないだろうか。アイドルファンのみならず、韓国のネクストトレンドを追いかけたければ要注目だ。