コンセプトストアの493は2017年12月、東京都目黒区上目黒4-9-3にオープンした。同店を手掛けるのは、都内のセレクトショップ、ネペンテス(NEPENTHES)出身の3人(匿名)。店舗名はシンプルに住所からとられており、設立メンバーの1人は「場所がわかりづらいので覚えてもらえるように。オープン初日はインスタグラムのみで告知し、知人を中心に口コミでだんだんとお客さんが来てくれるようになった」と話す。
月に1週間程度の不定期営業(営業日は493の公式サイトや公式インスタグラムで告知)で、知り合いのブランドの展示会やフレグランスの販売を兼ねたりと、店を訪れるたびに品ぞろえが大きく変わる。5月には3つのブランドにフォーカスした企画を予定している。前回はイギリス古着をテーマに「バーバリー(BURBERRY)」や「アクアスキュータム(AQUASCUTUM)」などもそろえた。「毎回の企画は3人が持ち回りで提案している。それぞれがブランドのデザイナーの仕事を掛け持ちし、この店をやっているので不定期営業がベスト。つかめない感じが東京っぽくていいのでは」とのこと。
店内には、国内ブランドの新品の他、南米のシューズやアクセサリー、ヨーロッパの古着などが並ぶ。「ラックの置き方にお店の味が出る。ラックの洋服を見る視線が左から右に流れる中でストーリーがあるはず。そこを見てもらえたら。特に入荷がなくても、商品の並びを変えている。“販売員あるある”で、手に取られず売れない洋服を少し触ってやると、急にその日に売れたりする(笑)」。知人が海外で買ってきたトートバッグや紙袋も販売している。「493はセレクトショップではなくて、コンセプトストアと呼ぶのがしっくりくる。しっかりセレクトをしているわけではないし、セレクトショップのようにカジュアルとモードを満遍なくそろえるといったバランスもとっていない。訳の分からない物だけど493で買うとよく見えてしまうというのが理想。この人が推薦するなら読んでみようと思わせる、本の帯のような存在にしたい」。
商品が所狭しと置かれている訳ではないのにどこか複雑で引っかかる店内の雰囲気は、ネペンテスのスタッフを経験したからこその色なのだろう。「勝手な解釈だが、ネペンテスに集まる人たちは個性が強い。アメカジ、ストリートなど好みもバラバラだが、清水慶三オーナーや鈴木大器『エンジニアド ガーメンツ(ENGINEERED GARMENTS)』デザイナーといった人たちのもとに集まり、一丸となって働き、遊ぶ時は遊ぶ。その気風を体現したかったので、矛盾や理解できないことがあれば上司にもかまわずかみ付いていた。かみ付きはするけど、上司とはめちゃくちゃ仲がよかった(笑)。今もそうだと思うが、何人か集まるとやっぱりネペンテスのメンバーは、見た目が業界の人たちの中でも目立つ。“周波数”が違うんだと思う」。
493の公式インスタグラム(@493_nakameguro)には、商品を取り入れたスタイリングが掲載されている。「ネペンテス時代はSNSがなかったこともあり、次に流行りそうなスタイルを先読みして着飾っていた。でも今は自分が着たい服を着るし、リアルなスタイルを提案するようになったと思う。VANの石津謙介さんの『世の中の時流に合っているものがファッショナブルだ』という言葉を大切にしている。衣服をことさら買わない時代になり、今のファッションは嗜好品であると思う。そうした時代にどういう提案をしていくのかが、これからの店やブランドの仕事だろう」。