「スタイルナンダ(STYLENANDA)」や「3CE」を手掛け、全株式をロレアル(L’OREAL)に売却すると発表したナンダ(NANDA)社は引き続き、創業者のキム・ソヒ(Kim So Hee)最高経営責任者(CEO)がビジネスの陣頭指揮を執り続けると発表した。ロレアルへの全株式の売却額は不明だが、ナンダ社の年商は現在、1億5000万ユーロ(約198億円)程度。先月韓国の経済紙「コリアン・エコノミック・デイリー(Korean Economic Daily)」は、「株式の7割程度をロレアルに3億7500万ユーロ(約495億円)で売却予定」と報じていた。
ロレアルは「クールなコリアンブランドを迎えることができて大変嬉しい。ロレアル・コリアもいよいよ、手頃な価格帯の『3CE』でアクセシブルな(手の届く)メイクアップ市場に参入できるし、一大トレンドのKビューティーを全世界に広めることができる」と買収の狙いを話す。「3CE」は実店舗とECの双方でKビューティーファンを魅了。100ドル(約1万700円)以下の商品とグッズで、トレンディかつ人形のように愛らしいメイクができるとアジアンガールの支持を獲得してきた。
キムCEOは特に、オンラインでのイメージ発信と、アジア人ならではの感受性を重んじてビジネスを成功に導いてきたと話す。そもそもECから生まれた「スタイルナンダ」とは、韓国語のスラングで「スタイリッシュな女の子」の意味。キムCEOは、「『スタイルナンダ』を立ち上げた2004年当時、韓国は西洋的なネーミングのショップやブランドばかりだった。だからハッキリ韓国語とわかる名前をつけたかったの」と振り返る。
会社は、ビジネススクールに在籍中のキムCEOが、ソウルの東大門市場で立ち上げた。当時キムCEOは、母親のランジェリーショップで販売する商品を探しに東大門市場を定期的に訪れ、間も無く韓国版イーベイ(eBay)のような「オークション.コリア(Auction.kr)」で商品を販売するようになった。キムCEOは当時を、「一般的なソウルの若者の初任給は、月額800ドル(約8万5600円)くらいの時代。私は毎日100ドル(約1万700円)を稼いでいた。誰よりも成功していると思ったわ」と振り返る。
成功の理由は、モデルキャスティングとメイク、そしてスタイリングだった。「みんなに“ライフスタイル”を伝えられるような写真を心がけたの」とキムCEO。そして05年に自身でECをスタートし、2年後には自社で商品を手がけるようになった。
ロレアルとの契約は、「スタイルナンダ」にとって、新たなスタートだ。キムCEOは、「ビジネスはまだ始まってもいないくらい(笑)」という。彼女は詳細については言及しなかったが様々な計画を温めているようで、ビジネスは少なくとも現在の4倍にはなると考えている。「中国だってまだまだ。ヨーロッパやアメリカは未知の領域。さまざまなパートナーと手を組めば、もっと大きくなれるわ」とキムCEO。「『シャネル』のようなビッグメゾンは、百貨店にも、免税店にも、地方にも店舗があるでしょう?だったら私たちだってもっと大きくなれるハズよ」。
ロレアルが全株式を取得する以前から、ナンダ社は欧米の企業や投資家の注目の的だった。LVMHモエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON)傘下の投資会社エル・キャタルトン(L CATTERTON)も興味を示し、株式の10%を引き受ける案を提示していたようだ。