日本初の女性向けのエンパワーメントメディア「ブラスト(BLAST)」が3月3日にスタートした。「ブラスト」はインスタグラム(@blast.jp)とユーチューブを軸に、ファッションやライフスタイルの最新トレンド情報、キャリアや生き方などをテーマとしたインタビュー、シリアスな社会問題などの動画コンテンツを配信している。編集長の石井リナ・ブラスト代表は、平成2年生まれのミレニアル世代で、SNSコンサルタントとして活動をしてきた。現在、「アドタイ」や「朝日新聞デジタル」「フォーブス ジャパン」などで連載を持ち、20代ならではの視点でSNSやデジタルマーケティングなどの分野について寄稿している。石井編集長に「ブラスト」立ち上げの経緯や、女性エンパワーメントを主軸にする理由などを聞いた。
WWDジャパン(以下、WWD):石井さんのこれまでの経歴を簡単に教えてください。
石井リナ(以下、石井):大学卒業後、新卒でIT広告代理店のオプトに入社しました。デジタルマーケティングのコンサルタントを経験し、その後SNSの部署に異動して、さまざまなSNSのコンサルタントとして働きました。その頃にインスタグラムのマーケティング本「できる100の法則 Instagramマーケティング」を共同執筆し、セミナーの仕事が増えました。オプトで3年働き、退社して2016年春ごろにフリーランスになりました。エスエヌスナップ(SnSnap)で、イベントマーケティングとSNSマーケティングの2軸に特化したマーケッター向けのメディア「コンパス」を立ち上げ、17年末まで編集長を務めました。
WWD:なぜ、今女性エンパワーメントのメディアを立ち上げたのか?
石井: 昨年アメリカの有名な辞書「メリアム・ウェブスター」が2017年を代表する言葉に「フェミニズム」を選んだと発表して、“フェミニズム”は大きくてグローバルなトレンドになったと思いました。「広辞苑」などでは、「フェミニスト」は“女性の権利を訴えていく人”とされていますが、グローバルでは、“どんな性別の人も社会、政治、経済的に平等であると考えている人”のこと。男女格差の度合いを示す「ジェンダーギャップ指数」で144カ国中、日本は114位と先進国では最下位。日本は世界とも、男女の間にもギャップがあると知ってショックを受けました。先進国で最も男女格差があることを日本の女性たちは気づいていないのです。
WWD:自身を“フェミニスト”と自覚したのはいつ?
石井:家族構成は父、母、私、妹の4人なのですが、父が積極的に家事を担当していて、中学生から高校生の6年間の弁当は父が作ってくれていました。自然と男女平等が当たり前だと考えていて、将来のことを考えるときは、私はバリバリ働く女性になると思っていました。
WWD:テキストメディアを持たずに、インスタグラムやユーチューブのプラットフォームで発信する理由は?
石井:インスタグラムのユーザーは6割が女性といわれていて、女性の声が上がってきやすい環境にあります。先進的なメディアや企業、インフルエンサーの活動をSNSで追っていると、フェミニストが多い。約2年前から見るようになった、ミレニアル世代の女性に一番支持されているという「リファイナリー29(Refinery29)」は月間4.5億人が見ているといわれていて、ファッションやアート、カルチャーを取り上げながら、銃乱射のニュースや、ウィメンズ・マーチなどを報道し、いろんなジャンルを縦横無尽に紹介しながら、根底にはエンパワーメントがあるんです。「リファイナリー29」に限らず、フェミメディアが増えている傾向にあります。今、テレビを見ず、文字も読まなくなったといわれるミレニアル世代はSNSから情報を得ることが多いんです。
WWD:起業することになったきっかけは?
石井:ワンメディアの明石ガクト代表との出会いが大きいです。共通の知人に「明石さんが、同じようなことを考えているから会ったほうがいい」と言われ、出資を受けることが決まり、背中を押してもらった。ワンメディアの他、Bダッシュファンド 3号投資事業有限責任組合、 アドウェイズの計3社から増資しています。
WWD:「ブラスト」が掲載する内容は?
石井:私の興味のあることを中心に、いろんなジャンルを取り扱っています。IT出身なのでテクノロジーのネタも知りたいし、ニュースも見るし、ファッションも好き。ニュースはロイターと契約していて、幅広いニュースを流します。ミレニアル世代にとってクリエイティブであることは重要。エンパワーメントの思想に共感してくれる人にいろんな分野を見せていけたらと思います。今の時代、エンパワーメントだけではクールじゃない。働き方、結婚、家族の作り方など、日本の女性にいろんな生き方を見せられるようなメディアにしたいと考えています。
WWD:「ブラスト」のコンテンツについて教えてください。
石井: “but, WHY?”というインタビュー企画は、オピニオンリーダーに出てもらうものです。第1回には、デザイナーやDJ、インフルエンサーとして活躍する植野有砂さんに出ていただきました。インスタグラムのストーリー用の縦動画、ユーチューブ向けの横動画もあって、世界中の人が見ることができるように英語字幕も入れるようにしています。今後、専門家に話を聞くコンテンツや、キャリアのインタビューも構想中です。キャリアって、ファッションメディアはファッションの人しかでてこないことに違和感があったんです。おもしろい女性にインタビューして、会社に勤めている生き方や、パラレルキャリアを特集したい。
WWD:テキストメディアを持たずに、動画コンテンツを中心にする理由は?
石井:これからはテキストメディアを持たない分散型メディアの選択肢があっていいと思います。従来、フェイスブックやインスタから公式サイトに集客することが多いのですが、変わっていくと思っています。例えば、SNS上ならテキストを読むモチベーションはあることがあるけれど、インスタグラムストーリー見ていて、紐づいたリンクをスワイプアップして見ることは少ない。今は、「ルーテ(lute)」くらいしか、インスタグラムストーリーを中心にしている日本のメディアはありません。海外メディアでは、インスタグラムストーリーでリッチなコンテンツが見られるのは普通になってきています。一方で、これからテキストメディアが必要になったら作るかもしれないし、ポッドキャストもやりたいと思っていて、柔軟にやっていきたいと思っています。
WWD:マネタイズ(収益化)はどのようにしていく?
石井:タイアップ広告と制作受託をしていきます。タイアップは企業のものをインスタグラムで発信します。制作受託は、現在制作チームを固めているところ。日本で縦型動画のクリエイティブが強いメディアはまだ少ないので、そのブランディングを強くしていきたいです。
WWD:今年の目標と、今後の計画は?
石井:インスタグラムは1年間で3万フォロワーを目指しています。2年後には、エンパワーメントやミレニアル世代に関するクリエイティブエージェンシーにしていく目標です。デジタルマーケティングを担当してきた経験から、媒体の運営だけでなく、企業のプロモーションやイベント企画、動画制作なども受けていきたい。そして一緒に活動していく人材を募集中です。