アシックスは2018年1~3月期の決算説明会を大阪で開き、3月29日に就任した廣田康人・社長COO(最高執行責任者)がアメリカでの業績回復に全力で取り組むと語った。当期は売上高が前年同期比7.4%減の1046億円、営業利益が同35.4%減の85億円。アメリカでの販売不振が長引き、収益が悪化している。
廣田社長は「減収減益で大変厳しいスタートとなった。特にアメリカは想定上に厳しい。減益についてはアメリカと日本での減収と、直営店費用の増加が響いた。一方で中国は20%以上増収し、『オニツカタイガー(ONITSUKA TIGER)』も25%の増収で、今後が楽しみだ」と話した。この結果を踏まえて「再び回復軌道に乗せ、 中期経営計画『AGP(アシックスグローバルプラン)2020』の目標である売上高5000億円以上、営業利益率7%以上、ROE10%以上の達成を私のミッションとしたい」と明言した。
具体的な施策として「AACD」と呼ぶ4つの重点課題を挙げた。「A」はアメリカ市場での復権、2つ目の「A」は長年の課題でもあるアパレルの再構築、「C」は成長市場である中国への投資、そして「D」はデジタルで取り組む新しいビジネスモデルを指す。
特に売上高の4分の1を占める米州(北米・南米)市場のテコ入れが急務となる。1~3月期も卸売チャネルの低調により、アメリカ市場の売上高は同26.8%減と大きく下がった。廣田社長は「アメリカでは市場の変化が大きく、イージーランニング市場が急成長しているが、そこへの対応が図れていなかった」と分析。アメリカ市場で好評を得ているイージーランニング向けの“ハイパーゲル(HYPER GEL)”など、新しい市場ニーズに合った商品の投入に力を入れる。「アメリカは当社にとって命運を握る市場。負けるわけにはいかない。世界的にもアメリカでの動向が影響するため、今を底に反転させていきたい。プラスの兆しは出てきている」と。
健康志向の高まりから急成長する中国市場についても言及し、「成長市場をしっかり取り込みながら、できるだけ早い時期に北米、欧州、日本に続く4本目の柱に育てていきたい」と語った。
廣田社長は1980年三菱商事に入社し、総務、人事、法務などの管理部門で長く勤めた。その間、6年間の英国駐在を経験し、2010年に執行役員総務部長に就任して以来、総合商社の経営にも携わってきた。関西支社長時代に尾山基アシックス会長(当時は社長)と出会い、昨年11月社長就任を打診され、今年1月アシックスに入社した。「アシックスほどグローバルな会社は日本国内では珍しい。業種は異なるが、商社でのグローバルな経験を経営に大いにいかしていきたい」と抱負を語った。
プライベートでは、東京マラソンを機にランニングを始めた市民ランナーであり、以前からアシックスの愛用者だった。ランナーの目標であるサブフォー(4時間以内の完走)をなかなか達成できなかったが、アシックスのランニングラボのアドバイスにより、2011年の「東京マラソン」で4時間を切ることができたという。「私のレベルが一番のボリュームゾーンなので、ランニング仲間の意見や自分ではいたときの感覚を、開発やマーケティングにフィードバックできれば」と話している。