スタートトゥデイが4月末に発表した採寸のための新型“ZOZOSUIT”の配布が始まった。昨年11月に発表した“ZOZOSUIT”とは異なり、ボディースーツについたドットマーカーをスマートフォンのカメラで360度撮影するという仕組み。旧型では4カ所に通信基盤があったために扱いがやや難しかったが、新型は洗濯もでき、電源も必要ないといった簡便さが売りだ。大量生産に向くため、旧型と比べてもかなりのスピードでの配布を実現しているようで、今期は600万〜1000万個の発送を計画するという。旧型ではBluetoothを用いるため、電波状況などに影響されるという弱点があったが、その点はカメラ機能しか使わない新型ではあまりストレスがないのだろうか。
早速自宅で新型“ZOZOSUIT”を使って採寸をしたところ、1番気になったのは計測にかかる時間だった。着用からテスト撮影を含めておよそ5分。1度測るだけならいいのだが、実際にやってみると1回の計測ではなんとなく不安を感じた。というのも、詳細サイズがすぐに表示されたはいいものの、本当にこれが正しいかと聞かれると、わからない。「再計測」というボタンがあるので、念のためにもう一度測っておこうと思い立ち、再度テスト撮影からの採寸。終了後になぜかアプリがダウンするというトラブルに巻き込まれ、結局3回目の計測を行うことになった(この原因はもしかすると自分のスマホにあるのかもしれない)。旧型では採寸にかかる時間がものの数秒だったので、何度かやり直してもすぐに結果が見られるという利点があった。新型では、何度か試してみようとすると、なかなかにストレスを感じるのだ。
3回目の計測が終わり、測定値が出たのだが、よく考えると前回の計測結果との比較はできない。不安を残したまま、最後の結果を“自分サイズ”として登録し、自分にぴったりなプライベートブランド「ゾゾ(ZOZO)」を注文することにした。商品の注文自体は非常に手軽で、あっという間に終わってしまった。
2回分の計測結果は以下のようになった。念のため、あくまで試作段階だが旧型で計測した数値とも比較をしてみた。新旧で計測のブランクが5カ月あるのである程度の誤差が仕方ないとしても、股下だけが異常に異なる数値となっている。どちらかがミスをしているのか、そもそもの計測域が変わったのか、結局正しい数値がわからないため、相対的な判断はできない。とはいえ、続けて計測した新型の2回分では最大0.3cm程度の誤差なので、手軽なキットにしてはかなり正確な計測技術だということは実感できた。
首回り
旧型35.4cm
新型(1回目)33.1cm、新型(2回目)33.2cm
肩幅
旧型42.5cm
新型(1回目)42.2cm、新型(2回目)42.5cm
腕の長さ(左)
旧型52.4cm
新型(1回目)56.8cm、新型(2回目)57.1cm
ウエスト(腰骨上)
旧型69.9cm
新型(1回目)71.3cm、新型(2回目)70.1cm
ヒップ
旧型83.2cm
新型(1回目)81.8cm、新型(2回目)82cm
太もも回り(左)
旧型47.8cm
新型(1回目)45.1cm、新型(2回目)45.4cm
股下(左)
旧型76.5cm
新型(1回目)66cm、新型(2回目)65.8cm
足首回り(左)
旧型19.6cm
新型(1回目)20.2cm、新型(2回目)20.4cm
こうした体験を踏まえて考えたのは、一般消費者としてぴったりの洋服が欲しい時、“ZOZOSUIT”をどこまで必要とするのかということだった。「ゾゾタウン」を何度も使っているユーザーにとっては、“自分サイズ検索”をするために計測をする価値は大いにあると思う。しかし、「ゾゾ」を今後の大きな事業柱にするためにも新規顧客は欠かせないはずだが、彼らにとって、これだけの時間をかけて少し不安が残る状態で「ゾゾ」を買うというのは、少しハードルが高いように感じてしまう。もちろん、これでぴったり、大満足な商品が届けばうれしいし、きっとブランドのファンになると思う。
少数だけ配布された旧型“ZOZOSUIT”では返品・交換が1件もなかったというが、新型“ZOZOSUIT”の大量配布が可能になったことで、実際の注文数や返品率、高倍率などのビッグデータもすぐに溜まるだろう。今後、ぴったりな商品が届くために感じてしまう不安がどれくらい新規顧客獲得や「ゾゾ」売り上げのハードルになるのか、CPO(顧客獲得単価)はどうなのかという観点に着目してみたいと思う。