大手繊維メーカーのセーレン(福井県福井市)の2018年3月期決算(連結)は、売上高が前期比6.2%増の1147億円、営業利益は同11.7%増の107億円、経常利益は同2.8%増の105億円となり、6期連続の増収増益、3期連続の最高益と好業績が続いている。しかし5部門の中で、車両資材部門に次いで売り上げ構成比率が高いハイファッション部門の売上高は同4.1%減の248億円、営業利益は同29%減の7億5000万円となり、減収減益と苦戦を強いられた。同部門の立て直しが今後の課題だ。
5月8日に開いた記者発表で、川田達男セーレン会長兼最高経営責任者(CEO)は不調のハイファッション部門の再建策について2つのポイントを挙げた。1つが、パーソナル・オーダー・システム「ビスコテックス メイク ユア ブランド(VISCOTECS MAKE YOUR BRAND)」の強化だ。同システムは客が店頭で、大画面高解像度モニターとタブレットを用いてバーチャル試着し、型、柄、色、サイズを47万通りの組み合わせから選び、自分の好きな1着を作ることができるというもの。IT技術と繊維一貫生産機能を融合した独自のシステムで、開発のために約30年の月日と約350億円を費やした大事業だ。店舗はセーレン本社ビル1階のほか、新宿高島屋、日本橋高島屋、大阪のヒルトンプラザなど8店舗がある。「この画期的なシステムの認知度の向上が難しい。今年は、効率化を図り、マイナスを減らしたい」と川田CEOは語った。
そしてもう1つが、インナー衣料の拡大だ。インナー衣料は好調で、トリンプ・インターナショナルのヒット商品「スロギー(SLOGGI)」は、セーレンの素材を採用している。差別化素材開発のため、国内とタイの工場で独自編機の増設を進め、生産能力の増強に着手したという。また、6月にリーバイ・ストラウス ジャパン、トリンプ・インターナショナル・ジャパンの社長を歴任した土居健人氏を執行役員として迎え、ハイファッション部門全体の立て直しを図る意向だ。
19年3月期の売上高は前期比4.6%増の1200億円、営業利益は同2.1%増の110億円を予想。ハイファッション部門の売上高は同2.9%増の256億円、営業利益は同33.2%増の10億円を目指している。