丸井グループが証券事業に参入する。今夏から若者層など投資に慣れていない人に向けて「つみたてNISA」の投資信託を、同社のエポスカードのクレジット決済で販売する。今年夏の事業開始を目指し、現在、関係省庁と協議を進めている。10年後に100万人へのサービス提供と預かり資産残高1兆円を計画する。
10日に都内で会見した青井浩・社長は、異業種だからこそやれることがあると強調した。「小売業の立場から見ると、既存の金融サービスは富裕層や一部の人しか対象にしていない。私たちは金融サービスを本当に必要としている若者のお客さまに向けて提供したい」。若者の多くは貯蓄や将来設計に不安を感じているが、資産運用の知識がなく、踏み出せないでいるケースが多い。ここに潜在ニーズを見出す。
現在会員数657万人のエポスカードは、会員の55%が29歳未満と若い。ここを基礎票にして、全国のマルイ店舗、カード、ウェブが三位一体となった事業スキームを組む。簡単に取引できるウェブをプラットフォームにしながら、取引を通じてカードにはポイントが加算され、マルイ店舗は申し込みのサポートや初心者向けのセミナーでバックアップする。
つみたてNISAは、若者や投資初心者の利用を促すために今年1月に金融庁が旗振り役になってスタート。年間の投資上限額が40万円と少額から始められることと、20年の長期にわたる非課税制度であること、対象商品は長期の資産形成に適した一定の投資信託に限定させるなど、さまざまなハードルを下げている。
丸井グループは、主要都市に店舗を構える小売業と膨大なクレジットカード会員数を誇る金融業という2つの顔を持つ。そもそも家具の月賦販売で創業した同社は、1960年に日本初のクレジットカードを発行。70年代以降は学生でも所有できるハウスカードの通称「赤いカード」が爆発的に浸透し、高価なDCブランドを若者がクレジットカードで購入する習慣を定着させた。2006年からはマルイ店舗以外でも使える汎用型のエポスカードを発行し、今日に至っている。18年3月期の連結営業利益352億円のうち、小売業は88億円なのに対して金融業で303億円を稼いでいる。