国内でミレニアル世代に人気の韓国ファッションを扱う企業が増える中で、これまであまり親和性が高くないと思われていた百貨店までもが本格的に参入を開始した。とくに阪急うめだ本店はその取り込みに熱心だ。同館でバイイングを担当する姜世求・阪急阪神百貨店 第1店舗グループ 第二婦人服商品統括部モードファッション商品部バイヤーに、韓国ファッションと百貨店の相性について聞いた。
WWD:阪急うめだ本店における韓国ブランドの展開状況について、教えてください。
姜世求モードファッション商品部バイヤー(以下、姜):2016年11月のFNOで「ハイ チークス(HIGH CHEEKS)」という韓国の雑貨ブランドのポップアップをやったのが最初です。ポップでキャッチーなブランドだったので、反応も良くて、翌週にはデザイナーズブランド「ハプニング(HAPPENING)」のポップアップを日本で初めて実施しました。その後、17年6月に「COLORFUL RESORT OF ASIAN CREATORS」というリゾートがテーマの催事を開催し、この時は10ブランド中7ブランドが韓国のものでした。
WWD:最近では今年2月に“ソウル”と銘打ったイベントを行いましたね。
姜:ある程度のニーズは過去のポップアップからわかっていたので、次のステージとして1階で新客を狙おうと、ミレニアル世代をターゲットに韓国6ブランドを集めた「ハローソウル」を開催しました。タイトルに“ソウル”を入れたのはこれが初めてですね。
WWD:想定したターゲットと実際の顧客層はいかがでしたか。
姜:韓国ブランドを目指して買いに来た10代の男女だけでなく、意外にも40〜50代に好評で、買ってくれました。もともと阪急は年齢でターゲットを明確に区切ってはいないんですが、驚きでしたね。娘のためのプレゼントという外商顧客の方もいて、そうした後押しもあって、売り上げ目標を大幅クリアできました。
WWD:なるほど。こうした反響を受けて、今後の展開予定はいかがですか。
姜:まずは、5月23日〜7月3日の期間、3階イベントスペース2で「ジェントルモンスター(GENTLE MONSTER)」に注ぐ次世代ブランドといわれる2つのアイウエアブランドの「ミュージーク(MUZIK)」「スティラー(STEALER)」を販売します。また、6月には今年もリゾートというテーマに合わせたポップアップを行いますが、7〜8割が韓国ブランドになりそうです。新しい提案でミレニアル、ジェンダーレスな10代をターゲットに、“ストリート × 真夏”という斬新なテーマを設けます。
WWD:なぜ、ここまで韓国を扱うようになったんでしょうか。
姜:何より、複数回のポップアップで売り上げが立ち、マーケットニーズを検証できたからですね。マーケットも伸びてきているし、やらない理由はありません。百貨店だからこそ、こうした新しいニーズを取りに行かなければいけないなと思うんです。そもそも、阪急として、イベントスペースではあたらしい価値を発信したいという思いがあって、これまで躊躇しがちだった韓国ブランドも扱うようになったんです。もちろん、韓国だけでなく、世界中のクリエイターに目をつけていて、その1つというイメージです。
WWD:韓国ブランドといえば、従来のシーズンの枠にはまらない在庫形態で、百貨店としていろいろと調節が難しい部分もあるかと思います。
姜:ポップアップは買い取り販売ではなく、委託でやっているんですが、なかなかたくさんの韓国ブランドを委託で扱うのは大変だと思います。韓国ブランド側も日本に出したいけれど、どうすればいいかわからないという現状もあります。ただ、シーズンがない分、逆に言えば、うまくコントロールさえできれば、1カ月単位で新しいものを提案できるわけです。僕はこれまで韓国で百貨店バイヤーをしていた経験もあるので、実際に現地ではじかに交渉ができますし、何回かポップアップを重ねる中で百貨店として韓国ブランドの扱い方を身につけてこれたんだと思います。
WWD:日本では韓国ビジネスが盛り上がっている理由について、どう考えますか。
姜:ロゴに代表されるキャッチーなデザインと、日本にはないような独特の色使いが新鮮ですよね。サイズ感を選ばないユニセックスさも世の中の潮流に合っています。そして、何よりアイドル文化がこのトレンドを後押ししていると思います。
WWD:そもそも、大阪と韓国の相性がいいようにも感じます。
姜:もちろん、相性のいいブランドもあります。阪急の顧客でも他にはないものを探している方も多く、もしかしたら韓国ブランドの目新しさはマッチするのかもしれません。