yonigeは、女性なら誰もが一度は経験したことがあるだろう同性への妬みや異性への憤りといった感情をストレートに歌い上げるガールズバンドだ。バンド編成では珍しい女性2人組で、2013年に大阪・寝屋川でギターボーカルの牛丸とベースのごっきんが高校卒業と同時に結成。15年に発表した楽曲「アボカド」で注目を集めると、昨年22歳の若さでメジャーデビューを果たした。今回インタビューに応じてくれた牛丸はオーストラリア人の父をもつハーフ。バンドとしての実力もさることながら、その端整な顔立ちとファッションセンスで「ギャップ(GAP)」とミュージックプロジェクト「1969・レコーズ(1969 RECORDS)」で協業を果たすなど、ファッション業界からも熱い視線が注がれている。
「ギャップ」と協業し製作された楽曲「our time city」のMV。人気モデルのる鹿が出演している
バンド結成から歌詞に込める思い、そして最近気になるブランドまでを語ってくれたインタビューと併せ、牛丸が1年ほど前にインスタグラムでたまたま見つけてから頻繁に訪れるようになったという新宿・歌舞伎町のセレクトショップ、ザ フォーアイド(THE FOUR-EYED)でのシューティングも行った。
WWD:音楽をはじめたきっかけは?
牛丸:物心ついた頃から人前で歌うのが好きだったのですが、「歌手になりたい」とは思っていなくて。でも中学1年生の時にチャットモンチーのライブ映像を見て、すぐにギターを買ってコピーバンドを組みました。オーストラリア人の父はもともとバンドをやっていたみたいなんですけど、それを知ったのはしばらくしてからですね。
yonigeを結成したのは、高校時代のバンドが卒業と同時に解散になったからです。ベースのごっきんとは別々の高校に通っていてライブハウスで出会いました。地元では「高校卒業=バンド解散」だったので、同い年のごっきんとバンド解散の時期が重なって、「一緒にやろう」となりました。
WWD:バンド編成で2人組は珍しいが、理由は?
牛丸:もともとはチャットモンチーみたいに3ピースのガールズバンドとしてやっていたんです。でもドラマーが2度抜けて、新たにメンバーを入れるとしたら女性が良かったんですけど、男性のドラマーの時はすべてが円滑に進んでいたのに女が3人も集まると衝突することが多くて。そもそも女性ドラマーが全然いないので、「じゃあ2人でいいか」みたいな。
WWD:作詞作曲はいつから?
牛丸:学生時代は一切やりませんでした。と言うのも高校在学中にコピーバンドとは別に年上の人たちとバンドを組んでいて、「それで飯を食べていこう」と思っていたんです。でも高校卒業のタイミングでいろいろあってクビになって(笑)。それで自分で作詞作曲をやるしかない状況に追い込まれて……本当にやりたくなかったんですけどね、“ギターボーカルが作詞作曲する”みたいな風潮があるじゃないですか?だからやりました(笑)。
バンドの名を一躍有名にした楽曲「アボカド」
WWD:乗り気じゃないなかでの作詞作曲は大変に思う。
牛丸:そうなんです。だから初期はその時の恋愛だったり、バイト先でのネガティブな思いをひたすら歌詞にしてました。もともとそういう曲ばかりを好んでいたし、そういう音楽を届けたいと思ったので。ちなみに「アボカド」は実話です。実際に彼氏にアボカドを投げつけました(笑)。
WWD:近年、多くの邦楽バンドが歌詞に横文字を使って表現を逃げているイメージがあるが、yonigeにはそれがない。
牛丸:確かにそうですね。普通にわたしが英語が苦手っていうのもありますけど、日記感覚で歌詞を書いているので自然に日本語の表現が多くなるんだと思います。
WWD:ガールズバンドのファン層は男性が多くなりがちだが、ファン層は?
牛丸:大半が若い女性で、男性も若い人が多いです。yonigeの結成当初、もともとごっきんがやっていたバンドのファンのおじさんが見に来てくれたことがあったけど、1回で来なくなったんです(笑)。バンドをやっているとガールズバンド好きの男性が観に来てくれることが多いのに、ことごとくダメなんです。二度とと来ない。ライブがキャピキャピしてない無愛想な感じなので、男性の心にはヒットしないんですかね……。女性に対して普段はうまくコミュニケーションが取れないんですけど、音楽だったら平気なんです。わたしがステージ上から歌いたいことを歌って、それを聞いてくれる。とにかく同性から支持されるのはうれしいですね。
WWD:ウェブ発信のアーティストが増えてきているいま、どう思う?
牛丸:周りにも、バンドを組みたいけど組めないからアプリなどを使って全部1人で曲作りしている友達がいます。私が物理的にそういったものに弱いので純粋にうらやましい。手軽に音楽を広められるし、良いことだと思います。