「コム デ ギャルソン(COMME DES GARCONS)」は5月21日から、青山店で「カルティエ(CARTIER)」のアイコンウオッチ“タンク(TANK)”に特化した展示・販売会を開催している。6月10日まで。
販売するのは、ロンドンにショールームを構えるコレクターのハリー・フェイン(Harry Fane)。かつてハリーは、ロンドンのドーバー ストリート マーケット(DOVER STREET MARKET以下、ドーバー)のイベントで、収集する時計の何本かを販売。その際、ドーバーのディスプレイに感銘を受け、今回の販売イベントに至った。青山店には1920年代のビンテージから、総プラチナの逸品(価格は1036万!)まで、ハリーが所有する37本の中から、25本を厳選して展示・販売。20日には「コム デ ギャルソン」顧客を対象にアポイントメント制でハリー自らが接客した。すでに数本の時計は売れたという。
ハリーに、「カルティエ」の“タンク”の魅力、そして「コム デ ギャルソン」で販売することについて聞いた。
WWD:集める時計は「カルティエ」の“タンク”だけなのか?それとも、ほかの時計も?
ハリー・フェイン(以下、ハリー):ほかの時計も収集しているが、一番好きなのは「カルティエ」の“タンク”だ。1917年に誕生して1世紀を生きてきた時計は、まさにタイムレスでジェンダーレス。そしてスタイルレス。今日の私のようなセットアップにも似合うし、店内を見ればわかると思うが「コム デ ギャルソン」のアバンギャルドなスタイルにも不思議と馴染む。1917年以来、60年くらいまでに作られた“タンク”は、2200本程度と言われている。このうち60年以降の60年間で紛失したり、盗まれたり、修復できないくらい破損してしまったりの時計が4分の1あるとしたら、世界に残る“タンク”のビンテージは約1650本。貴重なものだ。
WWD:所有する時計は全部で37本。そのうち25本も販売してしまっていいのか?
ハリー:私はトレーダーだから、仕方ない(笑)。全ての“タンク”は、記憶に焼き付いているから大丈夫だ。今回販売するのは、どれもストーリーに満ちたものばかりだ。一番高価な1036万円の時計はプラチナ製。まだ、プラチナ時計なんて多くなかった頃の逸品だ。
WWD:(アポイントメント制の接客を1日終えて)「コム デ ギャルソン」の顧客への接客はどうだった?正直、時計に詳しい人ばかりではなく、普段交流するのとは違う人たちだったと思うが。
ハリー:すごく面白い。皆、時計1本1本に込められたストーリーを重んじて、そこに魅力を感じ、中には買ってくれる人もいる。時計と洋服、商品は違うが、「コム デ ギャルソン」の顧客は、ストーリー性を重んじる人たちだからだろう。「今日買って、明日着て、明後日には捨ててしまう」モノや、そんな消費行動には共鳴できないところも、私と「コム デ ギャルソン」との共通点だ。私の「カルティエ」の“タンク”は、1日に5分遅れてしまう。毎日りゅうずを回す時、5分早めるのが日課だ。「面倒くさい」と思う人もいるだろうが、私には「愛らしい」。毎日、時刻合わせをするたびに時計と対話しているような気持ちになる。「コム デ ギャルソン」の顧客も同じなのでは?日々袖を通すたび、洋服と対話しているハズだ。