旭化成グループは2019年春夏のアウター素材展で、現在世界で唯一同社が生産するキュプラ素材「ベンベルグ(BEMBERG)」がサステイナブルな素材であることを大きく打ち出した。4週間土に埋めて分解が進んだ「ベンベルグ」製のドレスを展示しアピールしたもので、ファッション素材でも、生産工程も含めたサステイナビリティーを打ち出す動きが活発になってきた。
「ベンベルグ」はコットンの種の周りに生えている産毛のコットンリンターを100%原料とする再生繊維で、グローバルな認証や評価を取得している。それは例えば、リサイクル原料を使用し、化学薬品の管理や環境に配慮したトレーサビリティのある生産技術体制を認証するGRS(Global Recycled Standard)、有害物質による人体への影響や被害をなくすことを目的とし、繊維の全加工段階における原料、半製品・最終製品に適用される試験・認証システム「エコテックス規格100」などだ。
旭化成は生産においても化学薬品の管理や環境に配慮する体制作りを目指している。現在、自社発電設備を使用しているが、水力発電やバイオマス発電などを用い4割以上を再生可能エネルギーで賄っている。また、排熱利用や熱ロスの削減などでエネルギーの無駄を抑え、省エネルギー化を推進しており、二酸化炭素排出の削減につながっている。廃棄物削減にも取り組んでおり、「ベンベルグ」生産工程で出た繊維くずは発電のための燃料として利用するなど、ほぼ100%(16年度実績99.8%)を達成している。
「ベンベルグ」生産は旭化成グループの祖業の一つで、始めたのは1931年のこと。なめらかでとろみのあるシルクのような上質さが愛され、主に裏地に用いられてきた。しかし今日、さまざまな糸との掛け合わせや加工、織りや編みの組織を変えることで、インナーだけでなくアウター素材としてもバリエーションは豊富になった。例えば、松やに加工で撥水・防水加工を施した素材、和紙と掛け合わせて表現したふくれジャカード、麻と混紡しながら滑らかさを実現した素材、麻のような質感を実現した素材などさまざまだ。また、高度な設計と加工により「手洗OK」の素材も提案した。