アナ・ウィンター米「ヴォーグ」編集長 HUNTER ABRAMS / BFA / REX / Shutterstock (c) Fairchild Fashion Media
ニューヨークのタブロイド紙「ニューヨーク ポスト(New York Post)」のゴシップ欄に、アナ・ウィンター(Anna Wintour)=コンデナスト(CONDENAST)アーティスティック・ディレクター兼米「ヴォーグ(VOGUE) 」編集長が7月に退任するという記事が掲載された。コンデナストはすでに公式に否定しているが、米「WWD」が得た情報によると、これを事実と見ている情報筋もいる。“氷の女王”の異名を持つアナが不動の米「ヴォーグ」編集長であることは誰でも知っている事実だが、時の流れは誰にでも平等だ。遅かれ早かれ退任の時が来る。ではその日が来たら誰が後を継ぐのか?「そもそも後を継ぐことができる人はいない」という意見はひとまず置いておいて、米「WWD」がアナの後継者をその確率とともに勝手に大予想する。
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エドワード・エニンフル PRANDONI / BFA / REX / Shutterstock (c) FAIRCHILD PUBLISHING, LLC
エドワード・エニンフル / 確率:6%
1番の有力候補は、エドワード・エニンフル(Edward Enninful)英「ヴォーグ」編集長だろう。アナも米「ヴォーグ」編集長になる以前は英「ヴォーグ」で編集長を務めていたように、英「ヴォーグ」は米「ヴォーグ」に就職するための出世道であるというのが一般的な見方だろう。さらに、コンデナスト傘下のファッション誌「W」でスタイリストとして活躍したエニンフルは、ニューヨークというシビアな街に愛されている。しかしながら、彼のキャリアは比較的遅咲きである上に、ゲイと公表しているとはいえ、「#MeToo」が席巻しているアメリカが男性の編集長を受け入れてくれるかどうかは疑問だ。
エイミー・アストリー JILLIAN SOLLAZZO / WWD (c) FAIRCHILD PUBLISHING, LLC
エイミー・アストリー / 確率:5%
「ティーン ヴォーグ(Teen VOGUE)」時代にアナがメンターだったという有力候補は何人かいるが、エイミー・アストリー(Amy Astley)は、アナが後見になって「ティーン ヴォーグ」を立ち上げた人物だ。アナの指名を受け、コンデナスト傘下のインテリア誌「アーキテクチュラル・ダイジェスト(ARCHITECTURAL DIGEST)」の編集長を2016年から務めていることからも、アストリーがアナのお気に入りであることは明白だ。しかもアストリーはアナのようなボブのヘアスタイルにしていた時期もあるほどだ。長い間後継ぎ候補としてささやかれてきた彼女が選ばれれば、忠誠心の勝利だ。のちほど紹介するエヴァ・チェン(Eva Chen)のような“デジタル”という飛び道具はないが、アストリーは最も無難な選択だろう。
サリー・シンガー STEVE EICHNER (c) FAIRCHILD PUBLISHING, LLC
サリー・シンガー / 確率:4%
サリー・シンガー(Sally Singer)米「ヴォーグ」デジタル・クリエイティブ・ディレクターも、アナの長年のお気に入りの人物だ。しかも、彼女は“デジタル”というマジックワードも役職名に入っている。斜陽産業の雑誌業界がいかにデジタルに強い人材を欲しているかは、同じコンデナスト傘下の「グラマー(GLAMOUR)」のサマンサ・バリー(Samantha Barry)新編集長がCNN出身であることからも想像に難くない。紙雑誌の重要性が今後さらに薄くなり、デジタルに強いシンガーが紙雑誌を手掛けることもあり得る。
ルーシー・ヨーマンズ (c) FAIRCHILD PUBLISHING, LLC
ルーシー・ヨーマンズ / 確率:3%
英「ハーパーズ バザー(Harper’s Bazaar)」で経験を積み、ファッションECサイト「ネッタポルテ(NET-A-PORTER)」が発行する紙雑誌とデジタルマガジン「ポーター(PORTER)」の編集長に抜擢されたルーシー・ヨーマンズ(Lucy Yeomans)は、紙とデジタルの両利きだ。さらに、高学歴でファッション性が高いあらゆる業界の女性たちからの支持も厚い。ブロンドヘアにハイヒール、そしてラグジュアリーへの強い情熱を持つ彼女は、アナの後任をバッチリこなせそうだ。しかし、「ネッタポルテ」と「ユークス(YOOX)」を擁し、ファッションEC業界を牛耳るユークス ネッタポルテ グループ(YOOX NET-A-PORTER GROUP)は簡単に彼女を手放してはくれないだろう。
クリスティーナ・オニール (c) FAIRCHILD PUBLISHING, LLC
クリスティーナ・オニール / 確率:2%
クリスティーナ・オニール(Kristina O’Neill)「ウォール・ストリート・ジャーナル(The Wall Street Journal以下、WSJ)」編集長は、お堅い金融紙にファッションを持ち込んだ手腕の持ち主だ。「WSJ」の紙面を美しく整え、ニュースを深掘りして業界人にウケるコンテンツを作ることで、「ニューヨーク・タイムズ(The New York Times)」が手掛ける雑誌「T」などの競合媒体に打ち勝った。スタイルとコンテンツを融合させる達人の彼女であれば、古巣である「ハーパーズ バザー」に戻るというウワサが浮上したように、どんなファッション雑誌でも手掛けることができるだろう。しかし、安定した読者層の基盤がある「WSJ」を監督するのと「ヴォーグ」を監督するのでは比較にならない。話題性と予算については「ヴォーグ」のほうが圧倒的に有利だとしてもだ。
エレーヌ・ウェルタロス ANNA OTTUM (c) FAIRCHILD PUBLISHING, LLC
エレーヌ・ウェルタロス / 確率:1.5%
コンデナストの歴史の中で初の女性黒人編集長を務めたエレーヌ・ウェルタロス(Elaine Welteroth)前「ティーン ヴォーグ」編集長は、狙っていた「グラマー」編集長の座をサマンサ・バリーに取られたためにコンデナストを辞めたというウワサがある。しかし、「ティーン ヴォーグ」編集長時代にセレブエディターとしての地位を築いてきた彼女がタレント事務所に所属する前だったら可能性はあっただろう。「ティーン ヴォーグ」編集長を退任したと同時にそのパワーが薄れてきた今、「ヴォーグ」編集長に就任するのは難しいかもしれない。
エヴァ・チェン STEPHEN LOVEKIN / WWD / REX / Shutterstock (c) FAIRCHILD PUBLISHING, LLC
エヴァ・チェン / 確率:1%
元祖インフルエンサーのエヴァ・チェン(Eva Chen)。しかし、娘と息子の成長記とウーバーの車内で撮影したスタイリングをインスタグラムにアップするのに忙しい彼女が「ヴォーグ」の編集長をこなせるかは疑問だ。しかし、フォロワーの数は申し分ない。コンデナスト傘下の「ティーン ヴォーグ」と、廃刊になってしまったが「ラッキー(Lucky)」での編集経験もある。さらに、コンテンツをマネタイズする能力はピカイチだ。だが、“旧”メディアから“新”メディアにすでにシフトした彼女がまた“旧”メディアに戻るのは後退にも思える。
ナタリー・マセネット NEIL RASMUS / BFA / REX / Shutterstock (c) FAIRCHILD PUBLISHING, LLC
ナタリー・マセネット / 確率:0.1%
ネッタポルテ(NET-A-PORTER)を創業したナタリー・マセネット(Natalie Massenet)も、アナの親友ということもあり、長い間後継者としてささやかれてきた人物だが、彼女は幾度となく否定している。アナと同じく大英勲章を持つなど全てを手にしている彼女が、「ヴォーグ」の編集長という職を欲しがるとは考えにくいが、コンデナストからすれば、EC業界とファッション業界のコネ、起業家精神、リーダーシップ、そしてアメリカ人らしい笑顔をもつ彼女を手にすることができれば願ったりかなったりだろう。しかしやはり、すでに莫大な財産を手にし、さらに最近ではファーフェッチ(FARFETCH)非常勤共同会長に就任し、ベンチャーファンドまで立ち上げ、ママでもある超絶忙しい彼女がアナの後継者になるとは思えない。
オプラ・ウィンフリー H. WALKER / REX / Shutterstock (c) FAIRCHILD PUBLISHING, LLC
オプラ・ウィンフリー / 確率:0.0001%
米メディア界の女王、オプラ・ウィンフリー(Oprah Winfrey)。可能性は極めて低いが、テレビ番組の司会者からプロデューサー、女優、慈善家まで何でもこなし、自身の雑誌「O」も手掛ける彼女なら、可能性はゼロとは言えない。大統領選への出馬もささやかれている彼女がもし立候補しなかったら、米「ヴォーグ」編集長に立候補することもあり得る。オプラの親友で、TV司会者であるガイル・キング(Gayle King)「O」編集長の助けがあれば、仕事もこなせるだろう。
メーガン・マークル TIM ROOKE / REX / Shutterstock (c) FAIRCHILD PUBLISHING, LLC
メーガン・マークル / 確率:0.000065%
後継者になる可能性が極めて低いオプラをこのリストに入れるのなら、メーガン・マークル(Meghan Markle)=サセックス公爵夫人(以下、メーガン妃)も挙げてもいいかもしれない。ジャーナリストのアンドリュー・モートン(Andrew Morton)による彼女の伝記「Meghan: A Hollywood Princess」によれば、メーガン妃は故ダイアナ妃のヒールを履いてチャリティー活動をしたがっていたとある。今でこそ世界中からハリー王子との結婚を祝福されているが、数年後には退屈な王室暮らしとコンサバなキャサリン妃との仲に飽きてくるに違いない。ただ、いい服を着るだけのプリンセスではなく、それをファッション雑誌で編集する権力も手にしたプリンセスが現れたら面白いだろう。もしメーガン妃が編集長になったら、コンサバな王室ファッションに革命が起きるに違いない。