ファッション

「ルイ・ヴィトン」が南仏マーグ財団美術館で2019年プレ・スプリング・コレクションを発表

 「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」は28日、2019年プレ・スプリング・コレクション(クルーズ・コレクション)を南仏サンポール・ド・ヴァンスで発表した。

 招待客が最初に受け取ったカードには「フレンチ・リビエラへようこそ」のメッセージ。世界中から集まったジャーナリストや顧客はカンヌに滞在し、ショーの前後には地中海沿岸の保養地の穏やかな空気や料理を楽しんだ。

 ショー会場はカンヌから車で40分、中世の要塞都市サンポール・ド・ヴァンスにほど近い丘の上に建つマーグ財団美術館だ。同美術館を設計したのは、20世紀を代表するスペインの建築家ホセ・ルイ・セルト(Jose Luis Sert)で、建物自体のデザインに加え、自然と芸術の融合が魅力である。森を生かした庭は迷路のようで、アルベルト・ジャコメッティ(Alberto Giacometti)や、ホアン・ミロ(Joan Miro)、パブロ・ピカソ(Pablo Picasso)といった巨匠たちの作品がたくさん展示され、散策しながら間近で見ることができる

 19年プレ・スプリング・コレクションは、得意とするユニホームの要素は控えめに、タフな女性像は残しつつも、全体的にリラックスしてフェミニン。独特な形はミロなどの彫刻から影響を受けたようだ。「確かに彫刻の形や量感からは影響を受けたと思う。服をデザインする時は“重力”との闘いだからね」と、ニコラ・ジェスキエール(Nicolas Ghesquiere)「ルイ・ヴィトン」ウィメンズ・アーティスティック・ディレクターは語る。

 大きなパフスリーブのブラウスや、サンドロ・ボッティチェッリ(Sandro Botticelli)の絵画をほうふつとさせるドレープをたっぷり寄せたガウンなど、布の裁き方は計算ずくであろうが、どこかプリミティブ。色や柄も、石やブロンズといった彫刻の素材、水や炎といった自然の要素を連想させる。足元は人気のスニーカー“LV アークライト(LV ARCHLIGHT)”の進化版で、砂利を敷き詰めたランウエイを飛ぶように歩いた。

 コレクション全体がいつもよりほっこりとして見えたのは、バッグなどに登場した猫や犬のイラストゆえ。これは、イギリスのクリエイティブ・ディレクター、グレース・コディントン(Grace Coddington)とのコラボレーション。グレースは、2016年に引退するまで長年、アナ・ウィンター(Anna Wintour)米「ヴォーグ(VOGUE)」編集長の右腕として活躍した人物。大の猫好きとして知られるが、今回は猫に加えジェスキエールの愛犬もモチーフにしている。コラボレーションのアイテムは10月にカプセルコレクションとして発売される。

 建築やアートへ造詣が深いジェスキエールはここ数年、3月と10月のパリコレではルーブル美術館内でショーを行っている。また、毎年5月に開催するプレ・スプリング・コレクションの会場にも世界有数の美術館を選んでおり、18年には日本の滋賀のミホ・ミュージアムで、17年はブラジル・ リオデジャネイロのニテロイ現代美術館でそれぞれショーを開催した。
 
 ニコラによるウィメンズのコレクションは、ヴァージル・アブロー(Virgil Abloh)「ルイ・ヴィトン」メンズ・アーティスティック・ディレクターが得意とするような“バズる”キャッチーな要素は多くない。しかし、メゾンのリーダーとしてやるべきこと、すなわち新しいラグジュアリーの価値創造という意味では芸術を味方につけて新境地を開いていると言えそうだ。

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