5月28日、「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」は2019年プレ・スプリング・コレクション(クルーズ・コレクション)を南仏サン・ポール・ド・ヴァンスで発表した。会場となったマーグ財団美術館は、アルベルト・ジャコメッティ(Alberto Giacometti)や、ジョアン・ミロ(Joan Miro)、パブロ・ピカソ(Pablo Picasso)といった近・現代美術の巨匠の作品を数多く所蔵し、モデルはその作品群が立ち並ぶ迷路のようなランウエイを闊歩した。コレクションは、18年春夏で登場した “LV アークライト(LV ARCHLIGHT)”のソールを採用したサイハイブーツやショートブーツ、レースアップスニーカー、同じく18年春夏のシルクのショートパンツもさまざまなバリエーションで登場した。
会場にはエマ・ストーン(Emma Stone)、ジェニファー・コネリー(Jennifer Connelly)、レア・セドゥ(Lea Seydoux)、アナ・ウィンター(Anna Wintour)米「ヴォーグ(VOGUE)」編集長の右腕として長年活躍したグレース・コディントン(Grace Coddington)の姿も。今回のコレクションには大の猫好きとして知られるコディントンとコラボした彼女の愛猫などをモチーフにしたアイテムも発表された。
13年にウィメンズ・アーティスティック・ディレクターに就任し、さらに「ルイ・ヴィトン」との契約を更新したニコラ・ジェスキエール(Nicolas Ghesquiere)は、どんな思いでこのコレクションを作ったのか。米「WWD」が聞いた。
WWD:今回美術館で発表となったが、コレクションのインスピレーション源はここに展示されているアート作品なのか?
ニコラ・ジェスキエール(以下、ニコラ):彫刻の形や量感からは確かに影響を受けたと思う。服をデザインする時は“重力”との闘いだからね。女性の身体の動きに沿ってふわりと軽やかな服を作りたい。この身体の動きと、静物である素晴らしいアート作品との関係にはとても興味深いものがあると思う。
WWD:今回のコレクションでは過去のコレクションからのデザインに加え、幾何学的モチーフが描かれたデニムジャケットやさまざまな色のスパンコールジャケットやフェザートップスも登場したが、これらもアートからインスパイアされたもの?
ニコラ:今のエキセントリックな女の子たちが何を着ているかを想像したときに、おそらく誰かの手作りか、自分で作ったものを着ている姿を想像した。エキゾチックだけど、どこから来ているのかは説明できない。
WWD:親友でもあるグレース・コディントンにコラボを依頼した理由は?
ニコラ:コディントンの独特な性格には、とても惹きつけられるものがある。今回のコレクションは自分にとってエキセントリックなもの。つまり、個人がいかに自分のスタイルを持って、ムーブメントを起こすことができるかを問うコレクションなんだ。だから彼女のようなエキセントリックな人が自分らしい方法でミックスするというアイデアがとても気に入っている。
WWD:過去のデザインと新たなデザインが混在したコレクションだったが、それはなぜか?
ニコラ:デザインのボキャブラリーを増やすことがとにかく大切。過去5年間、「ルイ・ヴィトン」でボキャブラリーを増やしてきたから、そのボキャブラリーで遊んだり、壊してみたり、いじったりすることもできる。僕たちはみんな永遠に残るものを求めているけど、僕らがやっているのはファッションなんだ。みんなトレンドに乗りたくて、そんなファッションで新しい感情を抱くという欲求に応えるべくデザイナーは努力している。だから2面性がある。