日々顧客から多種多様な商品を買い取るリユースのビジネスは、一般的な小売りブランドとは異なり、商品を細かく単品管理をしなければいけない。その分、アパレル業界の中でもかなり進んだオムニチャネル・システムを導入していることも多い。買い取り店舗も含めて33のストアを持つ2次流通大手のコメ兵は、店頭とECをうまく融合した独自ビジネスで顧客を獲得してきた。コメ兵のオムニチャネル戦略を統括してきた藤原義昭・執行役員マーケティング統括部長に、自社のオムニチャネル戦略について話を聞いた。
WWD:単品管理が必要なコメ兵の在庫管理は相当複雑なのでは?
藤原義昭コメ兵執行役員マーケティング統括部長(以下、藤原):在庫管理はもちろんSKUごとに行っているが、ブランド同様に製品単位のデータもあるので、実は商品ごとに2つのデータを持っている。そうなるともちろん一般的なシステムは使えないので、自社専用のシステムを開発した。10年前からこの2重の商品管理をしているが、知る限り他にはないはずだ。
WWD:いわゆる単品管理ではなく、二重のデータを持つ理由とは。
藤原:MDのためだ。例えば、「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」のバッグ1つとっても、在庫管理はSKU単位での管理が必要だが、店頭ではブランドごとの売れ行きを効率的に把握するために、「『ルイ・ヴィトン』のバッグ」というような商品レベルで同じものを同じものだと認識することも必要だった。
WWD:商品は店頭とECでデータ連携をしているのか。
藤原:ほとんどの商品は店頭にある商品で、ECに連携をしている状態だ。
WWD:ECに出しても店頭などですぐに売れてしまうこともあるのでは?
藤原:たしかに商品の撮影をしてネットに掲載しても、すぐに店頭で売れてしまうこともある。だからといって、掲載する工数を省こうとは思わない。ネットには基本的にたくさんの商品があることが理想で、お金を稼ぐところというよりかは顧客がほしいものを見つけるためのメディアと考えている。SEOにも注力しているので、ほしいアイテムがあるユーザーが当社の商品に出合う場所だ。単価も高く、最終的には店頭に見に来てほしいので、ある種ECから店頭へ顧客動線を引いているようなものだ。
WWD:なぜ、店頭に誘致するのか。
藤原:われわれは鑑定士が育つよう店頭接客や教育に対して大きく投資をしている。彼らの接客は顧客にとって重要になる。また、商品の状態を確かめてもらうにはやはり店頭が一番だし、何よりもブランドありきのビジネスなので、そのブランドの世界観を毀損しないよう、空間ありきで見せることができるのは店頭だと思う。
WWD:“ブランドありき”ということだが、いわゆる1次流通との関係性をどう見ているか。
藤原:1次流通で人気がある商品は2次流通でも人気がある。ブランドはもはや2次流通をもコントロールしなければいけない時代だと思う。例えば、「ロレックス (ROLEX)」の“デイトナ”はとても希少で、店頭でもほとんど買うことができない。そうすると2次流通でも定価以上で取引されることになる。こうやって“球数”を絞ったブランディングをしながら、結果的に、プロパーに見に行こうという流れを作っているわけだ。そもそも、今の時代、SNSなどを通じてブランドが全くコントロールできないところに情報が流れていってしまう。少しでもブランディングをしようと思うと、いかにブランド自身が顧客との接点を長く持ち、いいブランド体験を提供できるかが重要になる。これがまさに今の“ニューリテール”という流れにつながっているのではないか。
WWD:藤原執行役員が考える“ニューリテール”とは。
藤原:ブランドとの接触時間をいかに確保するか、ということだと思う。「MUJIホテル」や「ホテル コエ トウキョウ(HOTEL KOE TOKYO)」なんかがまさにそうで、新しい体験や買い方を提案することで、きちんとブランドの世界観を見せることができる。人によっては買い物で商品を選ぶこと自体が苦痛だったりする。そこに対して“彼女と一緒にホテルに泊まれる”というような体験があれば、買い物のイメージは変わる。本来買い物は楽しいものなので、そんな感覚を体験を通じて提供できるようになったのだと思う。
WWD:「買い物における苦痛をなくす」という考え方は、スタイリストが定額で商品提案をしてくれるレンタルサービス「エアークローゼット(AIR CLOSET)」とまさに同じ考えだ。
藤原:ある種われわれのビジネスもレンタルサービスに近いものがある。実際に買った商品をすぐに売る顧客も多く、そうすれば差額金額でレンタルをしたようなもので、うまくサイクルができあがっている。買い物のハードルを下げているという意味では同じ考え方だろう。われわれが狙うミレニアル世代にとってはブランド品が高くて全く手が届かないものになっている。そんな世代にとって、ブランドの入り口になれればいいと思う。一時期、全身ファストファッションでバッグだけブランドというスタイルが話題になったが、これに近い考えで、中古品と新品をうまく組み合わせる顧客も多い。中古品でも新品でもブランドを好きなことに変わりはない。だからわれわれとしてもきちんとブランドのメッセージを発信できるよう買い取った商品を大切に扱うことは意識しているわけだ。