今年コンパニー フィナンシエール リシュモン(COMPAGNIE FINANCIERE RICHEMONT 以下、リシュモン)傘下に入ったことでも知られる大手EC企業ユークス ネッタポルテ グループ(YOOX NET-A-PORTER GROUP以下、YNAP)のディスカウントサイト「アウトネット(THE OUTNET.COM)」が今春、日本に上陸した。通常ディスカウントサイトといえば、ECサイトのシーズン落ちアイテムなどを扱うことが多いが、「アウトネット」ではディスカウントサイト専属のバイヤーが存在し、ブランドから直接商品を買い付けているという。同サイトの独自戦略について、堀田律子ユークス ネッタポルテ グループ日本支社ジェネラルマネジャーに話を聞いた。
WWD:あらためて、「アウトネット」とは。
堀田律子ユークス ネッタポルテ グループ日本ジェネラルマネジャー(以下、堀田):2009年にラグジュアリーEC「ネッタポルテ」の姉妹サイトとしてスタートした。現在は14カ国語に対応し、100カ国以上で販売をしている。「ステラ マッカートニー(STELLA McCARTNEY)」や「ヴァレンティノ(VALENTINO)」など、350以上のブランドアイテムのオフシーズンアイテムを最大75%のディスカウントプライスで提供している。12年にはセレクトのアイテムを邪魔せずうまく取り入れられることを狙い、プライベートレーベル「アイリス アンド インク(IRIS AND INK)」をローンチした。
WWD:日本法人の業務内容は?
堀田:日本語対応に加えて、物流についてもヤマト運輸と組んで日本に合った形での配送を実現している。今後はサイズやフィテッィングの悩みに対応すべくコンサルティングサービスを導入する他、人の力を使ったライブチャット機能なども検討している。
WWD:なぜ、今日本上陸なのか。
堀田:グローバルでもアジア太平洋地域は今非常に注目を集めており、ヨーロッパ、アメリカと並ぶ市場になっている。日本市場にはファッション感度の高い“成熟した”顧客が多く、きちんとローカライズをすることで顧客と直接コミュニケーションをしたいと考えた結果だ。
WWD:「アウトネット」最大の特徴は在庫をブランドから直接仕入れていることだと思う。
堀田:設立当初は「ネッタポルテ」の在庫を利用したが、オフシーズン市場が活発化したこともあり、現在では商品の90%を専属バイヤーによる買い付けで仕入れている。そのため、ディスカウントサイトながらもキュレーションされたブランドや商材だけを扱うことでサイトのブランディングにつなげている。
WWD:アイテム自体はグローバルで統一しているのか。
堀田:在庫は全てイタリア・ボローニャで管理をしている。全世界から同じアイテムを閲覧でき、注文後はその日のうちに出荷、2営業日で日本に商品が届く。リパッケージを含めても、注文後4〜6営業日で商品が届く仕組みだ。
WWD:商品の出し方にもこだわるのか。
堀田:“ジャストイン”という新商品のコーナーがあるが、非常に人気が高く、すぐに売り切れてしまうものもある。そもそもオンシーズンと比べて入荷時期もまちまちだが、週4日(月・火・木・金)の入荷日にあわせて掲載スケジュールも考えている。
WWD:ディスカウントサイトといえば、ブランドとの関係性が難しいと思われがちだが、なぜブランドからの直接仕入れが可能になったのか。
堀田:ブランド自体もオフシーズンの在庫をどうするかという問題を抱えている。われわれには「ネッタポルテ」もあり、きちんとしたブランド力を持っていることを認識してもらっているので、一般的なディスカウントサイトとは異なる位置付けだと思う。キュレーション力なども含めて、きちんと世界観を持っていることが評価されているのではないだろうか。
WWD:オンシーズン商材を扱う「ネッタポルテ」とは競合しないのか。
堀田:「アウトネット」は「ネッタポルテ」の周りにあるサイトではなく、ファッション業界のど真ん中にあると考えている。もちろん両サイトで情報共有はしているが、それぞれのサイトに対する顧客のニーズも異なるし、むしろ「アウトネット」の方が“成熟した”顧客が多かったりする。
WWD:顧客にとっても両サイトはうまく切り分けられていると思うか。
堀田:特に日本の顧客は使い分けがうまい。理由があって買えなかった商品が残っているなど、「アウトネット」には「ネッタポルテ」とは異なる“サプライズ”もある。これも、キュレーションを意識してサイトを作り込んでいるためだ。
WWD:ブランディングのためには、ディスカウントサイトと言えど、エディトリアルも必要か。
堀田:ECサイトでは面と向かってコミュニケーションができないため、コンテンツを通じてわれわれの世界観を伝えるしかない。その分顧客が好きなタイミングで邪魔されずに買い物ができることもあって、じっくりコンテンツを見てくれる場合も多い。今回の上陸に合わせて、日本語対応した形でエディトリアルをスタートした。