カナダの大手小売ハドソンズ・ベイ・カンパニー(HUDSON’S BAY COMPANY以下、HBC)は、2年前に取得したフラッシュセールサイトのギルト(GILT)を、ボストンを拠点に同様のフラッシュセールサイトを運営するル ラ ラ(RUE LA LA)社に売却することで合意した。日本の事業については、別の企業に売却する。HBCはギルトを2億5000万ドル(約272億円)で取得したが、今回の売却額は明らかになっていない。事業の譲渡は7月にも完了予定だ。
HBCは現在ポートフォリオの再構築を進めている。今後、同じく利益が十分ではない事業、例えばドイツの大型スーパー、カウホフ(KAUFHOF)などは売却の可能性が高いとウワサされている。カウホフは競合のカールシュタット(KARSTADT)から買収提案を受けたことがあるが、当時はそれを却下した
ギルトはHBCが傘下に収めた頃から、売り上げが2ケタ減と苦戦しているようだ。HBCはギルトを立て直し、傘下のサックス・フィフス・アヴェニュー(SAKS FIFTH AVENUE)によるアウトレット業態にインショップを構えるなどを計画していたが、軌道には乗らなかった。ブランドは、オフシーズンの商品を販売するならサックス・フィフス・アヴェニューのアウトレットを好み、ギルトは選ばれにくかったようだ。ギルトの商品の多くは、ブランド以外の第三者から調達したものが多く、結果、ラグジュアリーやデザイナーズブランドが手薄だった。
HBCのスポークスマンは、「会社の基盤を強固なものにするため、ギルトの売却を決めた。ギルトの特性を活かしてくれる引き受け先が決まって嬉しく思う」とコメントした。
一方、ル ラ ラのマイケル・ルビン(Michael Rubin)エグゼクティブ・チェアマンは、「2009年にル ラ ラを買収して以来、ずっとギルトとの相乗効果を夢見てきた。あれから9年、毎年話し合いを続け、ついに実現した。1つのシステム、1チームのバイヤー、1種類の物流で2つのビジネスを手掛けることができる」と喜びを語る。ル ラ ラとギルトは2000万人のユーザーを抱え、うちモバイル決済は全体の6割を占める規模になる。これを機に新たに150人のMD、クリエイティブ、テクノロジー担当などを採用し、ニューヨークとボストン、ケンタッキーのオフィスなどに人員を配置するようだ。同社の年商は4億ドル(約436億円)と推定されるが、会社はこれを認めていない。ギルトの買収を機に、年商10億ドル(約1090億円)企業への成長を目指すようだ。重複する顧客は15%程度にとどまるとして、2つのサイトは個別に継続する。
ル ラ ラはスポーツアパレルを販売する「ファナティクス(FANATICS)」や会員制のオンラインサイト「ショップランナー(SHOPRUNNER)」などを擁するキネティック(KYNETIC)グループの傘下。ルビン=エグゼクティブ・チェアマンは、キネティックのトップも務める。