オリヴィエ・ルスタン(Olivier Rousteing)「バルマン(BALMAIN)」クリエイティブ・ディレクターのドキュメンタリー映画が2018年夏に完成し、19年初めに公開される。手掛けたのは、09年に公開されたヴァレンティノ・ガラヴァーニ(Valentino Garavani)のドキュメンタリー映画「Valentino: The Last Emperor」の製作チーム。配給会社は未定だ。映画では、24歳という若さで老舗メゾンのトップに就任したルスタンの、養子時代の生い立ちなどから、「バルマン」の成長を支えるプロフェッショナルな背景までを追う。ファッションに関するドキュメンタリー映画は業界の偉人や大ベテランを題材にすることが多い中、32歳にしてドキュメンタリー映画の主人公になったルスタンは何を思うのか?米「WWD」が聞いた。
WWD:まず、今回の映画を簡単に説明すると?
オリヴィエ・ルスタン(以下、ルスタン):30代の僕のこれまでの人生を扱うドキュメンタリー映画だ。この映画は美しいメッセージになるよ。映画の中では今僕がいる場所にたどり着くまでの葛藤や打ち込んだ仕事、僕に対する批判までを取り上げている。
WWD:30代にしてドキュメンタリー映画の題材になることはまれだが、映画化の話が来た時どう思った?
ルスタン:僕が「バルマン」のクリエイティブ・ディレクターに就任して4年半しか経ってないのに、メゾンのDNAを反映して「H&M」とのコラボコレクションを作らないといけなかった時と似ていると思った。「バルマン」に来てから8年が経つけど、ミスター・ヴァレンティノやピエール・カルダン(Pierre Cardin)に比べたらまだまだだ。でも僕の人生はいわばファッションパラドックスみたいで、誤解をされてしまうこともある。だから映画化されることはとても面白いと思った。
WWD:5月に開催された第71回「カンヌ国際映画祭(Cannes Film Festival)」では、エンターテインメント界の人種差別問題を取り上げた映画「Noire N’est Pas Mon Metier(Black Is Not My Profession)」に出演した16人の女優を「バルマン」がスタイリングしていたが?
ルスタン:肌の色はその人を定義しない。だからこの映画にはとても共感したんだ。肌の色の違いについてなんて話したくもないという人もいるけど、未来を変えるかもしれないことだから、声を大にして訴えるべきことだと思うんだ。16人の女優の話を聞けば、彼女たちが直面している差別や固定観念と闘っていることを理解できる。僕が人生の中で下した選択は、もし肌の色が違かったらまた別のものになっていた。人種差別は表に出なくても、存在するんだ。
WWD:同じ黒人デザイナーとして、ヴァージル・アブロー(Virgil Abloh)が「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」のメンズ・アーティスティック・ディレクターに就任したことをどう思う?
ルスタン:歓迎しているよ。あらゆる人種が、高級メゾンのクリエイティブ・ディレクターに就くことができるということを証明してくれた。
WWD:ミレニアルズのような新世代とどのようにコミュニケーションをとっている?
ルスタン:今は世界が若い世代を必要としているけど、このことが僕の1番のエネルギー源になっていると思う。ミレニアルズのことを話すということは、単にハッシュタグでミレニアルズと付ければいいということではなく、新世代を考えるということなんだ。そして僕から見てヴァージルはその新世代と話すことができる人物だ。彼は人々が何が欲しいのかを深く理解している。だからとても楽しみだね。
WWD:新世代とコミュニケーションする「バルマン」の試みとしては、VR(仮想現実)体験ができる店舗をミラノにオープンするが?
ルスタン:僕にとってVRは未来なんだ。VRはいつの日か、ファッションショーやジャーナリストやインフルエンサーのあり方を変えると信じている。革命が起きると思う。
WWD:最後に、今回の映画はハッピーエンドで終わる?
ルスタン:現時点で僕からは、映画は平和に包まれた美しい瞬間で終わるとしか言えないかな(笑)。