全世界での視聴数がオリンピックをしのぐとも言われる世界最大のスポーツの祭典FIFAワールドカップ(FIFA World Cup以下、W杯)が、日本時間の6月15日にロシアで開幕する。
1930年の初開催から今大会で21回目を迎えるが、ロシアおよび東ヨーロッパでの開催はこれが初めて。初出場のアイスランドとパナマや、日本など31カ国に開催国のロシアを加えた32カ国が参加し、7月15日までの約1カ月間で11都市12会場を舞台に64試合が行われる。
開幕戦は15日0時からで、開催国ロシアがサウジアラビアを迎え撃つ。国際サッカー連盟(FIFA)が発表するFIFAランキングで出場国中最下位の70位と低迷が続くロシア代表だが、過去一度も開催国が開幕戦で敗れたことがないだけに、同じくFIFAランキング67位のサウジアラビアにどこまで食らいつけるか。まさに“絶対に負けられない戦い”だ。
そんな世界が注目するW杯は、各スポーツメーカーにとってもブランドをアピールする絶好の機会であり、こちらもまさに“絶対に負けられない戦い”といえる。特に各国代表ユニホームのサプライヤー契約は見所の1つだ。
今大会のユニホームをブランド別に見ると、「アディダス(ADIDAS)」が11カ国、「ナイキ(NIKE)」が10カ国、「プーマ(PUMA)」が4カ国、「ニューバランス(NEW BALANCE)」が2カ国、「エレア(ERREA)」「ヒュンメル(HUMMEL)」「ウールシュポルト(UHLSPORT)」「アンブロ(UMBRO)」が1カ国という内訳で、W杯公式スポンサーの「アディダス」が「ナイキ」を1歩リードしている(イラン代表は「アディダス」のユニホームを着用しているものの、契約は結んでいない)。14年のブラジル大会では「ナイキ」が10カ国、「アディダス」が9カ国、「プーマ」が8カ国と、「アディダス」が「ナイキ」の後塵を拝したが、今大会で2大会ぶりにトップへと返り咲いた。これは「ナイキ」と契約するW杯常連国のオランダやチリ、アメリカの予選敗退が響いたもので、同じく「プーマ」も常連国のイタリアやカメルーン、コートジボワールの敗退により数を大きく落としている。
「アディダス」「ナイキ」「プーマ」の“サプライヤー3強”は2002年の日本・韓国大会以降の躍進が特に顕著で、02年は21カ国、06年は26カ国、10年は28カ国、14年は27カ国と過半数を占めており、優勝国別に見ても1998年のフランスが「アディダス」、2002年のブラジルが「ナイキ」、06年のイタリアが「プーマ」、10年のスペインが「アディダス」、14年のドイツが「アディダス」とまさに寡占市場となっている。
しかし、足元のスパイクを見てみると「ナイキ」が約50%以上の支持率を得ている。というのもスパイクに関しては選手とスポンサーとが個人で契約することが多く、「ナイキ」は「アディダス」や「プーマ」よりも早い段階で選手個人とのスポンサー契約に踏み切っていた。それゆえ「アディダス」のお膝元ながらドイツ代表サミ・ケディラ(Sami Khedira)や、スペイン代表で日本の「ヴィッセル神戸」に移籍を発表したことでも話題のアンドレス・イニエスタ(Andres Iniesta)は、「アディダス」のユニホームに「ナイキ」のスパイクといったあべこべなスタイルになっているのだ。さらに「ナイキ」は今後5年間で約11億ドル(1200億円)をスポンサー契約に投じると表明していることから、22年のカタール大会では「ナイキ」のスパイクを着用した選手をより多く見ることになるかもしれない。
なお、日本代表は1999年4月から日本サッカー協会とアディダス ジャパン社との間で独占複数年契約が結ばれており、今大会でも「アディダス」製のユニホームを着用する。コンセプトは“勝色”で、“勝色”とは日本の伝統色である深く濃い藍色で、かつて武将が戦いに挑む際に身につけた鎧下と呼ばれる着物に使われる藍染の生地の中で、最も濃い色とされていたもの。“勝色”の藍を出すためには布を叩きながら染めるため、「叩く=褐(濃い藍色)=勝つ」にかけて、勝利への験担ぎとして採用されている。
日本代表はロシアとサウジアラビアについで、FIFAランキング61位と出場国中ワースト3。見通しの暗い順位ではあるが、先日FIFAランキング37位のパラグアイ相手に親善試合とはいえ4-2で勝利を手にしたことから、W杯での活躍にも光明が見えてきた。初戦となる19日のコロンビア、25日のセネガル、28日のポーランドとの戦いで蒼色の鎧に身を包んだサムライたちは、世界をあっと言わせることができるのか。