こんにちは。編集長の向千鶴です。メンズに続いて、パリで開催中の2016年春夏オートクチュール・コレクションもコラムをアップする決心をしました。決心なんて大げさに聞こえるかもしれませんが、コレクションの取材を終えた後のホテルで寝落ちせずにコラムを書けるのか、正直言うと少々不安。だから決心を共有させていただきました(笑)。どうぞおつきあいください。
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初日の「アトリエ ヴェルサーチ(ATELIER VERSACE)」に続いて2日目のハイライトは「クリスチャン ディオール(CHRISTIAN DIOR)」。言うまでもなく「クリスチャン ディオール」はクチュールメゾンです。だからラフ・シモンズが去った後の新体制のお披露目の場は、プレタポルテではなくオートクチュールに違いないので、もしやこの場で大ニュースが!?と心構えをしつつ会場のロダン美術館へ向かいました。デザインチームによる発表なら小規模のプレゼンでもよいはずなのに、いつもと同じ会場で発表するあたり、むむむ、匂います。そして着いたら、この立派なテント。期待が高まります。
ミラー素材のテントにはロダン美術館の建物と庭が写り、迷路に入り込んだような雰囲気です。会場内もミラー素材のため天地左右が交錯し、ミステリアス。
次ページ:蘇る、あの衝撃的な“事件” ▶
ショーが始まる前、印象的だったのはシドニー・トレダノ=クリスチャン ディオール クチュール社長がバックステージを出入りしながら細かなチェックを行い、スタッフに指示を出す姿でした。ジョン・ガリアーノが去ったシーズンの「ディオール」のショーの光景が蘇ります。
あの時は、あの衝撃的な“事件”の直後であり、人種差別発言問題で逮捕されたガリアーノの姿は当然そこにはなく、業界関係者は興奮状態にありました。ショーの前、白衣を着たアトリエスタッフを従えて登場したトレダノ社長は、フランス語の手紙を静かに読み上げました。ガリアーノについてはほとんど触れず、“クチュールメゾン「ディオール」は、アトリエがありこの職人がいるから揺るがない”そんな主旨を長い時間をかけて丁寧に観客へ伝えたことが印象に残っています。
結局、今回のオートクチュールの「ディオール」は、デザインチームによる発表であり、フィナーレに登場したのは若いデザインチームでした。
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今回の「ディオール」の一連の選択、つまり、プレゼンではなくショー形式であり、会場はいつもと同じロダンであり、ショーの後にはデザインチームのメンバーが観客の前で挨拶をするという、その選択は、経営陣によるものです。そして、これらの選択を通じて“アーティスティック・ディレクター不在でも「ディオール」は揺るがない”という強いメッセージを伝えています。
次ページ:“ブランドは誰のもの?” ▶
ショーの後、バックステージへ入りました。今回は誰からもコメントは取れないと聞いていたのですが、メゾンの空気を体感したく。トレダノ社長はいつも通り入り口で客を丁寧に迎え、一段落すると周囲の人を遠ざけた場所で、ベルナール・アルノーLVMHモエ ヘネシー・ルイ ヴィトン会長兼最高経営責任者(CEO)と何やら話し込んでいました。2人は大柄なこともあり、密談風景には簡単には近寄れない緊張感が漂います。
1989年に「ディオール」を買収したアルノーCEOと、98年から同職に就いているトレダノ社長。改めてブランドはデザイナーだけのものではない、いやむしろ、オーナーデザイナーでない限りブランドはデザイナーのものではなくオーナーのものである。そう感じたのでした。アルノーCEOやトレダノ社長に「ブランドは誰のもの?」と質問すれば、紳士な2人からは「顧客である女性たちのもの」と返ってくると思いますが、それとはまた違った意味でブランドはオーナーのものなのです。
「ディオール」の経営陣がラフ・シモンズの後任に誰を起用し、メゾンをどこへ導くのか。その決断はファッションデザイナーという仕事のこれから、ファッション業界のシステムのあり方などなど、多方面に影響を与えるだけに注目です。
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