「おいしいものを皆で食べよう」と試食イベントを開催した寺尾玄バルミューダ社長
バルミューダ(BALMUDA)が5月、サマーレシピを味わうプレスイベントを開催した。極上のトーストができる“バルミューダ ザ・トースター(BALMUDA THE TOASTER)”で火が付いたバルミューダの今年の売り上げ目標は100億円。昨年末、松屋銀座内に初のブランドショップを出店し幅広い年齢層のファンを増やしている。寺尾玄バルミューダ社長に老舗インド料理店と共同開発した“バルミューダ ザ・カレー(BALMUDA THE CURRY)”の誕生秘話や食べることのすばらしさ、そして、ビジネス展開について聞いた。
WWD:家電メーカーのバルミューダがレトルトカレーを作った理由は?
寺尾玄バルミューダ社長(以下、寺尾):インド料理店デリー(DELI)のカレーが大好きで、仕事後に会社がある武蔵境から上野店まで週4回通っていた。デリーのカレーの特徴は口に入れたらお辞儀して殴る(まろやかさの後に強烈な辛さ)、そして後味すっきりと味の時間差攻撃が絶妙だ。おいしいカレーの鉄則は「あしたのジョー」的ストレートさ。それがデリーのカレーにはある。この味を“バルミューダ ザ・ゴハン”で炊いたご飯で食べてみたいと思ったからだ。
「寺尾社長の熱意に圧倒された。彼はオーラがある人」と語る田中源吾デリー社長
デリーのスタッフが“バルミューダ ザ・カレー”を使用して作った特製カレー
WWD:デリーとのコラボのアプローチはどのようにしたか?
寺尾:通わなくても、デリーのレトルトカレーがあると知って工夫したくなった。そこで「バルミューダ」の炊飯器持参で工場に押し掛けた。田中源吾デリー社長に条件を全部飲むからと熱意を伝えて実現した。
WWD:今回試食イベントを行った理由は?
寺尾:デリーの6月のマンスリーカレーに“バルミューダ ザ・カレー”が登場するのでその記念に、田中社長とデリーのスタッフによるサマーカレーを作ってもらうことにした。おいしいものを皆で食べようというノリだ。タブロイドにもレシピが掲載されている。ポイントはトマトと韓国産の青トウガラシ。キュウリのピクルスと玉ネギ、プロセスチーズの薬味で辛さを調節して味わってほしい。
「バルミューダ」の製品を使用して作れるレシピなどを紹介したタブロイド
WWD:レシピなどを紹介するタブロイドを制作したのは?
寺尾:テレビCMも考えたが、15秒で“人生は面白くてテイスティー”というメッセージは伝わらないと思った。そこで食べるすばらしさをタブロイドを通して伝えたい。われわれは他の生き物を食べて生きている。テクノロジーが発達したと言っても、ゼロから食べ物を作ることはできない。(食べ物を)作る楽しさ、食べる喜びを表現したい。バルミューダの家電は道具でしかないが、その喜びを生み出す助けになればと思っている。それを伝えるためにタブロイドに行きついた
WWD:季節感あふれるビジュアルだが、お気に入りは?
寺尾:一番好きなのは子どもが遊んでいる最初の見開き。ザ・ブルーハーツの「1000のバイオリン」から引用した歌詞を載せているが、本当は自分でこの詩を書きたかった。制作は全て社内で行っている。店頭に置いたり、商品に同封して発送したり、DMとして使用している。
WWD:松屋銀座内のブランドショップが好調のようだが?
寺尾:松屋銀座の顧客向けイベントの松美会でトークショーを行ったが年齢層の高い人々に来場してもらい、それが実売につながった。皆ストーリーを求めていると思った。社会がストーリーを必要としている。松屋銀座内にあるような体験できるポップアップショップを地方の百貨店で開催するつもりだ。ゆくゆくは路面店を出したいが、まだ8アイテム。商品のラインアップが十分ではない。
松屋銀座のブランドショップ限定カラーの“バルミューダ ザ・トースター”
WWD:寺尾社長は話し上手でプレゼンテーションやトークショーではいつも盛り上がるが、その秘訣は?
寺尾:ミュージシャンだったから、来た人を喜ばせなければならないというショーマンシップ精神はあると思う。やるからにはどうやって爆笑させようかといつも考えている。
WWD:今年は新製品の発売は?また、今後の戦略は?
寺尾:秋には新製品の発売を予定している。消費者にとっては、家電か食品かといったセグメントはどうでもいいこと。クリエイティブとテクノロジーを融合し、世の中の流れに合わせて多くの人に役立つ家電やサービスを提供したい。