「コム デ ギャルソン・オム プリュス(COMME DES GARCONS HOMME PLUS)」は、持ち前のパンクマインドでフォーマル、特にスーツにメスを入れた。色や柄はもちろん、フリルやドレープなどの装飾で、心から楽しむスーツ。ただそれを、ブランドらしい破壊のマインドで仕上げている。
ショーは、ブラックスーツにボウタイ姿の集団で幕を開けた。文字を追うだけだと実にエレガントな紳士の登場のように聞こえるが、彼らのスーツは、7者7様に破壊され、シワが寄り、網のような洋服に覆われたものもある。続くのは、カーキの小さなチュールを幾重にも重ねたスーツ。その姿はミノムシ、もしくは戦場に潜む兵隊のようで、フォーマルの一般的なエレガンスとはかけ離れている。ポマードで固めたヘアスタイルのカツラと、ブラックタイがアンバランスだ。
色鮮やかなチェック柄のスーツにも破壊的手法が加わり、本当ならエレガンスを導くはずのディテールを手に入れる。時にはテープ状の生地を縫い付けることで強引にシワを寄せ形成したドレープ、切り裂くことで生み出したフリンジや洋服の動き。マントはネオンカラーの化繊素材。パターンも異様で、細身のモデルさえ、ボタンを留めると生地が攣れてしまうほどタイトなシルエット。それがまた、スーツの表面感の凹凸につながっている。派手なカラーリングも、クレイジーな印象を増す要因。足元は、「ナイキ(NIKE)」とのコラボスニーカーだ。
イヴニングもある。花柄を秘めた光沢素材で作ったスーツには、ゴールドチェーンのアクセサリーを合わせた。鎖に絡まるのは、目玉や牙などのおどろおどろしいモチーフ。川久保玲のスーツは、とことんクレイジーだ。