デンマークの家具メーカー、カール・ハンセン&サン(CARL HANSEN & SON以下、カール・ハンセン)は6月6日、日本で2店舗目の旗艦店を大阪・南堀江に出店した。“Yチェア”で知られるカール・ハンセンは2017年に、110年の社史で最高の売上高、約80億円を記録した。過去5年間で業績を倍増し、グローバルに2ケタ成長を続けており、22年に現在の売上高の2倍である約161億円を目標に掲げている。
昨年12億円の売上高だったカール・ハンセン ジャパンのネイサン・ベックウィス(Nathan Beckwith)新社長にグローバル成長の背景と日本における戦略について聞いた。
WWD:14年に東京・青山旗艦店に続いて大阪にも旗艦店を出店した目的は?
ネイサン・ベックウィス代表(以下、ベックウィス):旗艦店は“Yチェア”だけでなく「カール・ハンセン」というブランド全体の世界観を体現する場所だ。大阪の旗艦店は東京とは異なり、どちらかと言うとインダストリアルな雰囲気。日本第2の都市である大阪に出店することで、西の消費者およびコントラクト業者への訴求を図る。
WWD:「カール・ハンセン」は世界の主要都市に旗艦店を積極的に出店しているが、旗艦店の役割は?
ベックウィス:消費者にブランド全体の世界観を体験してもらう場所。取引先が顧客を案内したり、コントラクト関連のショールームの機能も果たす。ワークショップなどを開催し、クラフツマンシップに触れてもらう場でもある。
WWD:日本での小売り、卸、コントラクトのビジネスの割合と卸先数は?
ベックウィス:卸が70%、コントラクトが20%、小売(旗艦店)が10%。卸先数は百貨店やインテリア専門店など約150。旗艦店出店というと警戒されるが、実際は相乗効果で卸先の売り上げアップに貢献している。今後は、ホテルやレストランなどのコントラクト案件に注力し2年以内に割合を30%にしたい。
WWD:ベストセラーは“Yチェア”だと思うが、“Yチェア”に続く売れ筋はどの商品か?
ベックウィス:日本における“Yチェア”の売り上げは全体の63%。「カール・ハンセン」にとって魂とも言える商品で稼ぎ頭であることには間違いないが、同時にリスクでもある。旗艦店で“Yチェア”以外の名作や商品に触れてほしい。Yチェア”をデザインしたハンス J.ウェグナー(Hans J. Wegner)による名作“CH20”や“CH23”などのシンプルな椅子は日本人の感性にアピールするはずだ。木製家具のイメージが強いカール・ハンセンだが、クロスやレザー張りのソファなどの販売にも注力したい。
WWD:日本法人の社長に就任したのは今年2月だが、日本のインテリア市場をどのように見るか?
ベックウィス:日本ほど北欧デザインと親和性のある市場はない。カール・ハンセンにとって日本は北欧諸国に次ぐ第2の市場だ。日本の消費者のクラフツマンシップに対する評価の高さと、デザインや歴史に対する知識はかなりのものだ。
WWD:イケア(IKEA)やニトリ(NITORI)などの廉価な商品を提供するメーカーもあるが?
ベックウィス:大量消費の時代は終焉したということを彼らは認識していると思う。今後新たな価値をどのように作り出していくか思考錯誤しているはずだ。大企業なので、彼らの動きは大きな影響力がある。
WWD:ヨーロッパ市場における売り上げは前年比130%以上、特に本国デンマークは135%と高い数字だ。最も浸透した市場でこれだけ高い伸長率を出せる背景は?
ベックウィス:ホテルなどのコントラクト部門が伸びている。そこからさらに、あのホテルのような部屋にしたいという消費者に広がっているようだ。