ケリングのフランソワ・アンリ・ピノー会長兼最高経営責任者(CEO)
ラフ・シモンズが「ディオール(DIOR)」を去り、アルベール・エルバスが「ランバン(LANVIN)」から追われと、有力デザイナーの退任に揺れた2015年のファッション業界だったが、一方で「グッチ(GUCCI)」にはアレッサンドロ・ミケーレという新たなスターデザイナーが誕生した。「グッチ」を傘下に擁するケリングのフランソワ・アンリ・ピノー会長兼最高経営責任者(CEO)が、「グッチ」の大胆な方向転換について語った。
「まず、マルコ・ビッザーリCEOと、『グッチ』は大胆な変革が必要だと話し合ったんだ」とピノー会長兼CEO。長年「グッチ」をリードしてきたパトリツィオ・ディ・マルコ前社長兼CEOの後任として15年1月1日付で、マルコ・ビッザーリ前ボッテガ・ヴェネタ社長兼CEOを起用した。「商品に関してだけでなく、メゾン全体として新たなアーティスティック・ディレクションと組織の変革が必要だった。大きな変化にはリスクを伴うが、クリエイティブな仕事にリスクはつきものだ」。
そして、1月9日にはクリエイティブ・ディレクターを務めていたフリーダ・ジャンニーニが突然退任した。15-16年秋冬のメンズおよびウィメンズのコレクションショーを控えながらの、予定よりも1カ月早い退任に業界中が驚いた。そして、同月19日の2015-16年秋冬メンズ・コレクションで、一大方向転換を決行。アンドロジナスでロマンチックな独特の世界観を持ったコレクションは、驚きと称賛を持って迎えられた。そのフィナーレに現れたのが、ミケーレだ。ミケーレは同月21日に正式にクリエイティブ・ディレクターに就任した。
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条件1:メゾンへの深い知識と理解力
02年から「グッチ」のデザインチームに参画し、フリーダの右腕を務めてはいたものの無名だったミケーレにグループの基幹ブランドを任せるという大胆な決断について、ピノー会長兼CEOは「クリエイティブ・ディレクターを決めるにあたっての条件は2つあった」と語る。一つはメゾンの歴史や文化への深い知識と理解力を持っていること。「『グッチ』を大きく変える計画があったからこそ、今までのブランドカルチャーについての知識が必要だと考えた」。
条件2:自身のクリエイティビティーをメゾンと共有
もう一つは、ブランドに対し揺るぎない情熱を持ち、自身のクリエイティビティーをメゾンと共有できることを挙げた。「単にブランドのヘリテージを“翻訳”するだけでは足りない。われわれはクリエイティブで、メゾンと“結婚”したいと思うくらい、情熱的な人を探していた。これがあって初めて、偽りのない、オーセンティックなものが生み出される。ミケーレはこれらの条件を全て持っていた。彼が持つビジョン、メゾンへの情熱、変革に必要な奥深い知識は他の誰にも負けることはなかった」。
ミケーレによる新生「グッチ」はマーク・ジェイコブスをはじめ、ファッション業界人を魅了し、ブランドを再びトレンドをけん引するポジションへと引き上げた。「これを可能にしたのは彼の知識とパッションの融合だ」とピノー会長兼CEO。また、「ミケーレはトレンドにとても敏感で、充実した私生活を送っている人だ。彼は旅をし、常に周りの音に耳を澄ませ、自分の職業をしっかり理解している。また、世間に対してとてもモダンな捉え方をし、注意深いとともに柔軟な考え方の持ち主だ。彼の『グッチ』との結婚は美しく、だから初日から大成功だったのだ」と語った。
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