ファッション

ミシュランシェフも大ファン「大地の芸術祭」の魅力

 新潟県越後妻有で開催される「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ(以下、大地の芸術祭)」をご存知でしょうか?最近では、「瀬戸内国際芸術祭」など地方で行われるアートフェスティバルが増えていますが、「大地の芸術祭」は2000年に始まった元祖ともいえる地方アートフェスティバルです。今年は3年に1度の「大地の芸術祭」が7月29日~9月17日に開催されます。日比野克彦ら日本のアーティストをはじめ、レアンドロ・エルリッヒ(Leandro Erlich)やダミアン・オルテガ(Damian Ortega)ら世界中からのアーティストの新作が発表される他、コンサートや食などのイベントが行われます。食のプロジェクトの1つにミシュランレストランの「ジャン・ジョルジュ東京(JEAN-GEORGES TOKYO)」の米澤文雄シェフが手掛けて現地で供される特別メニューがあります。芸術祭開幕を前に同レストランで開催された試食会に行ってきました。

ミシュランシェフが地元の素材にこだわり開発したメニュー

 ジャン・ジョルジュ東京は、ニューヨークの名店「ジャン・ジョルジュ・ヴォンゲリスティン(JEAN-GEORGES VONGERICHTEN)」の東京店で、米澤シェフはニューヨークの本店で日本人初のスーシェフ(副料理長)を務めた人物。帰国後、日本の名店で腕を振るい、東京店オープンを機に総料理長になりました。彼はこれまで「大地の芸術祭」の通年プログラムでコラボレーションをしていますが、3年に1回の本祭での参加は初だそうです。

 

 特別メニューは、ガイド付き日帰りツアー「カモシカぴょんぴょんコース 里山・土木編」で提供されるもので、メニューの中から“フレンチ冷汁”と“妻有ポークとふきのとうのマリネ 味噌バターソース”“八海山甘酒のアイス”を試食しました。米澤シェフは、「食は文化の一つ。越後妻有で食べられている食材を使用してメニューを作りました」と話します。冷汁には地元のみそ、メーンには妻有ポークと妻有で収穫したフキノトウ、麦みそを使用。デザートには地元の甘酒のアイスに桑の実から作ったジャムが添えられています。「山菜と言えば春食べるものと思っていましたが、越後妻有では春にたくさん収穫して1年中食べる習慣があります。それが面白いなと思いました」と米澤シェフ。冷汁は和風のさっぱりした味付けで、トマトやバジル、オリーブオイルでさりげなくフレンチの要素が加えられています。ポークは麦みそにマスタードやバターを使用したソースがフキノトウの深い味わいを引き出し、アイスは上品な甘みが特徴でジャムはハチミツのような優しい風味。「芸術祭には外国人も多く来るので、ビーガンの人でも食べられるものをと思い、冷汁とデザートのメニューを考えました。特に甘酒は大きな可能性のある食材です。米が原料で、こうじによる天然の糖分を持つものですからスーパー調味料ですね。米アレルギーの人はいないですから」と米澤シェフ。「ミシュランシェフが手掛ける和食と言ってもいいのでしょうか?」と聞くと、「越後有妻で誰もフレンチを食べたいとは思わないでしょう。その土地のものが一番食べたいはず。また、プロではない現地の人でも作れるレシピにしています。もちろんフレンチの要素は加えていますが」と言います。確かに、米澤シェフが現地で毎日作るわけではないので、必然的に素朴なメニューになり、それが「大地の芸術祭」を訪れる人に求められる味なのでしょう。

アートだけでなく人とのふれあいが楽しめる

 試食会の後で、米澤シェフとモデルで「大地の芸術祭」の大ファンという田中里奈さん、地方創生ベンチャー連合の共同代表理事を務める山野智久アソビュー社長によるトークショーが行われました。米澤シェフは、「東京・浅草で生まれ育って、ニューヨークに行ったので、私には田舎というものがありませんでした。越後有妻に行ってそこの人と食文化のすばらしさに、すっかりはまりました」と話します。田中さんは、数年前の冬に越後妻有を訪れたそうです。「自然の中にアートがあったり、民家や廃校がアートになっているのを見て衝撃を受けました。宝探しの感覚で楽しめます」と田中さん。20代を対象に“体験”を提供する企業を運営している山野社長は、「アートとは無縁の地元の人が楽しそうに参加しています。パワースポット的な“気”のよさがあります」と目を輝かせます。アートだけでなく、イベントや食などいろいろと楽しめる要素が満載の「大地の芸術祭」。米澤シェフは「人、アート、町が一体になったワクワクするイベントです。アートだけでなく現地の人とのふれあいも楽しんでほしいです」と力強く言います。今年もさらに盛り上がることでしょう。

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