ファッション

セレクトショップのシスターが10周年を機に独立した理由 長尾悠美が語る

 今年10周年を迎えたセレクトショップのシスター(Sister)は7月1日、渋谷・神宮前から松濤に移転してリニューアルオープンした。場所は神泉駅から徒歩5分ほどの立地で、シスター初の路面店だ。店舗面積は約20平方メートルで、ショーウインドーからのぞく店内はグレーの壁面と床のシックな空間に、真新しい黒いハンガーやラックに国内外のセレクトアイテムと、古着が並ぶ。開店直後のウインドーディスプレーには、英国の気鋭ブランド「リチャード クイン(RICHARD QUINN)」の鮮やかなプリントのドレスやブラウスを飾っている。

 シスターは10周年を機にフェイク トーキョー(FAKE TOKYO)からも独立し、新たなステージに立った。移転に至った経緯やこれまでのシスターの歩み、これからについてなどを長尾悠美シスター ディレクターに聞いた。

WWD:10周年を迎えたが、どのようにシスターは始まったのか?

長尾悠美シスター ディレクター(以下、長尾):もともとは下北沢にある老舗ビンテージショップの社長から、新しい古着屋をスタートさせるという話で誘っていただき、古着100%のショップとしてスタートさせたんです。名前はオノ・ヨーコとジョン・レノン(John Lennon)のアルバム「Some Time in New York City」に収録されている「Sisters, O Sisters」という曲名から取りました。このアルバムは、1970年代にヨーコさんが女性の権利や、女性の価値を世の中に認めさせたいという活動をしていて、それをジョンがサポートをしていたという背景があって、私のお気に入りの曲でした。店は女性だけで運営していくと決めていたので、女性に関連する言葉にしたのも理由の一つです。置いている服は、女性らしい服を意識し、スパンコールやラメなどの服を集めていました。

WWD:その後、セレクトショップへと業態転換している。

長尾:もともと古着屋の背景があったので古着を扱ってきましたが、オープンして1年が経ち、デザイナーズ商品を買い付けるようになりました。3年目に独立し、フェイク トーキョー(FAKE TOKYO)の傘下に入りました。それから、100%デザイナーズ商品を販売するようになったんです。シーズンに合わせてトレンドの服を扱っていて、いろんな人に店を知ってもらうきっかけになったと思います。また、シスターはブログを強みにしていて、オープンから1日も欠かさず更新しています(リニューアル休業中を除く)。10年前、ショップスタッフが商品の着こなしをSNS発信しているのもめずらしかったときから、ショップとスタッフ別の個人ブログでアップしてきました。今はインスタグラムの方がお客さまが多いですが、変わらずブログも伝統として毎日アップし続けています。

WWD:フェイク トーキョーの独立の経緯は?

長尾:8年目くらいから、10周年を迎えるタイミングで独立するか、シスターの店自体を閉めるのかを、考え始めました。店を長く続けるとマンネリ化することもあり、ECの売り上げが上がってくる中でお客さまの買い物の仕方も変わって、必ずしも店舗である必要があるのかな?と思うことがありました。でも、これから他の活動をするとしても自分たちのスペースが必要になるので、店を続けることを考えるようになりました。その10周年のタイミングで独立しました。

WWD:長尾さんはシスター以外でもスタイリストとして活躍している。

長尾:スタイリングの仕事と、映画の宣伝のためのTシャツ作りなどの仕事を始めています。スタイリングは定期的に話をいただけたときに担当していて、3~4年前から配給会社のアップリンク(UPLINK)と一緒に映画館で取り扱われるグッズを作り、シスターの店頭でも販売しています。私自身ミニシアター系の映画が好きで、趣味の延長で好きな監督とコラボレーションしているイメージです。最近はアレハンドロ・ホドロフスキー(Alejandro Jodorowsky)監督の「リアリティのダンス」や「エンドレス・ポエトリー」、ルシール・アザリロビック(Lucile Hadzihalilovic)の「エヴォリューション」などに携わりました。

WWD:新店の場所はなぜ松濤にしたのか?

長尾:独立を考えてオフィス物件を見に行きましたが、そこはお客さまをお呼びするような場所ではないと思って。そんなときにこの物件を見つけて、渋谷の雑踏を抜けてリラックスできる場所で、目の前が公園であり自然と四季を楽しめることが気に入りました。また、これまでシスターは地下か2階にあったので、路面店でウインドーディスプレーを見せられることもチャレンジしてみたいと思いました。

WWD:移転オープンで品ぞろえは変わったのか?

長尾:新しいのはメーンディスプレーになっている「リチャード クイン」と、「タコマフジレコード(TACOMA FUJI RECORDS)」のTシャツなどで、あとは前の店舗からの継続ブランドがほとんどです。国内は「トーガ(TOGA)」「タロウホリウチ(TARO HORIUCHI)」「ブラックミーンズ(BLACKMEANS)」など、インポートは「アシュリー ウィリアムス(ASHLEY WILLIAMS)」「マルタ ジャクボウスキー(MARTA JAKUBOWSKI)」「ブレス(BLESS)」など。商品構成は6割がデザイナーズ、3割が古着、残りの1割は雑貨という感じです。

WWD:ECは?

長尾:好調です。時期によっては売上高が、実店舗よりECのほうが高い月もあります。送料を無料にしていることもあり、EC顧客もいれば、店頭の顧客でもECで購入してくださる方もいて、ECで買って店舗に取りに来られる方もいます。今注力しているのは、買い付けた商品をスタイリングして撮影し、デザイナーのインタビューを媒体に掲載してもらうことです。シスターで買い付けている服は他店でも販売しているので、お客さまはどこからでも購入できると思います。でも、シスターで提案するという差別化をするために、何かを仕掛けることが大切だと思っています。

WWD:今後の目標は?

長尾:シスターを中心に、ショップとして一歩進んだ企画もやっていきたいと思っています。お声掛けいただけたら、いろいろチャレンジしたいと思いますね。

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