セルロース繊維の世界最大手企業、オーストリアのレンチング・グループ(Lenzing Group以下、レンチング)はこのほど、不織布の専門ブランドとして新たにリヨセル繊維の「ヴェオセル(VEOCEL)」をスタートする。設立から80年間、一貫して企業向けビジネスが主力だったが、消費者向けのサステイナブル素材としてのブランディングを強化し、シートマスクやボディワイプ、おむつなど「ヴェオセル」製品をパートナー企業と開発していく。
消費者向けのブランディングをスタートする背景には欧州委員会が1月に公表した「欧州プラスチック戦略」がある。これは、欧州連合(EU)域内で使い捨てのプラスチック容器や包装を30年までに無くし、すべてを再利用、あるいはリサイクルできる素材にするというもの。5月には海洋プラスチック問題の原因である使い捨てプラスチック品10種(プラスチック製ストロー、プラスチック製トレイなど)の使用をEU全域で禁止する法案を提出している。レンチングは、サステイナブル繊維であることを打ち出すことで、これまで使い捨てシートマスクなどの主力素材だったポリエステル繊維からの代替を狙う。
「ヴェオセル」は、原料が石油であるポリエステルとは異なり、パルプ由来で生分解性(物質が微生物によって二酸化炭素と水に分解されて自然環境に還る性質を持つこと)を持つ。常温の土壌で4カ月以内に完全分解され、堆肥化される。レンチングがパルプの原料に使用する木材も、選定された管理森林を供給源としており、自然を保全する循環型採算方式(クローズド・ループ)にも則っている。
プロジェクトのきっかけは「メガトレンドとして持続可能性の重要性が増している。深刻化する海洋プラスチックゴミ問題にも対処するものだ。また、ミレニアル世代は、自分たちが自然環境やその資源に残す影響に対してより高い意識を持っている。不織布はほとんどが使い捨てのため、持続可能な商品構成と透明性の高い製造プロセスに対する関心が高まりに応えることができる」とウルフガング・プラッサー(Wolfgang Plasser)=レンチング・バイス・プレジデント兼グローバル・ビジネス・マネジメント不織布担当は語る。
今後、欧州ではプラスチックが含まれるウェットティッシュ、ナプキン、風船等の難水溶性製品に、環境破壊の原因になりうるとの表示が義務化される予定だ。
レンチングの2017年の売上高は22.6億ユーロ(約2920億円)、従業員数は6488人。生産量は100万9000トン。