7月にパリで開催された2018-19年秋冬オートクチュール期間中に、多くのジュエラーがハイジュエリーを発表しました。以前、ハイジュエリーは「パリ・アンティーク・ビエンナーレ(PARIS ANTIQUE BIENNALE)」で発表されていましたが、数年前から7月のオートクチュールが年に1度のハイジュエリーの発表の場として定着しています。オートクチュールを見てハイジュエリーを購入する顧客も多くいるようです。
どのメゾンもクラフツマンシップを駆使した傑作を発表します。その中で新鮮だったのが、「ブシュロン(BOUCHERON)」による、自然の花びらから制作したリングです。“自然”は多くのジュエラーのテーマですが、「ブシュロン」のクレール・ショワンヌ(Claire Choisne)=クリエイティブ・ディレクターは、新たな自然の表現方法を考え、花びらを素材に使用できないかと研究を重ね、約2年をかけて完成したそうです。クレールさんは、「花を永遠のものにするのが私の夢でした」と興奮した様子で話してくれました。
会場の一室には、自然の花々と共にリングを展示。自然の花びらは安定させるためにマット調に仕上げられ、裏に宝石がパヴェセッティングされているものもあります。価格は約2000万円から。展示と同時に受注会も行われており、新作の中では人気が高く、商談に入っているリングもありました。
この研究をもとに、自然の花のボリュームを再現したジュエリーも展示されていました。“アジサイ”のネックレスは、花びらは使用されていませんがアジサイの花一つ一つが忠実に表現された見事なものでした。クレールさんは、「自然の花のボリュームは完璧ではありません。その不完全ささえ美しいのです」と言います。これらのボリューム感は花びらをスキャンしたデータをもとに再現されました。ジュエリーというと、職人による手仕事のイメージが強いですが、自然の花の美しさを忠実に表現するために“スキャン”という技術が使われているのが今日的です。
多くのジュエラーがインスピレーション源にする自然をクレールさんは独自のアプローチで分析し、今までに存在しなかったジュエリーのクリエイションに成功したのです。今年設立160周年の「ブシュロン」にふさわしい新作といえるでしょう。