ファッション

2019-20年秋冬テキスタイルトレンド 「ミラノ・ウニカ」はサステイナビリティーとさまざまな文化の融合をアピール

 ファッション素材市「ミラノ・ウニカ(MILANO UNICA)」が7月10日にイタリア・ミラノで開幕し、2019-20年秋冬トレンドのコンセプトを「nation to nation(国から国へ)」として、3つのキーワードを打ち出した。

 全体コンセプトについて、ステファノ・ファッダ(Stefano Fadda)「ミラノ・ウニカ」トレンド委員長は、「ここ最近、(さまざまな地域において)たくさんの壁ができたり、分割したりと世界が分かれていく出来事が多かった。だからこそ、いろんな文化を融合させる提案が重要だと考えた。また、コンセプトと3つのトレンドにおいて、それぞれ3つの国に焦点を当てた」と語る。

“オーガニック・グランジ”

 「エコロジカルやサステイナビリティーへの意識の高まりをテーマの中に加えた」とファッダ委員長は続ける。1つ目のテーマを“オーガニック・グランジ”とし、農民の生活や森林といった自然をキーワードに、「(現在の)傷ついた自然環境を表現するとともに、手作業を加えることで(未来へ向かう)新しさを提案した」。粗野な雰囲気のある厚手の生地をベースにステッチやアプリケといった手仕事を加えた素材を並べた。使い古したようなムートンにリボンを施した素材や、クラシックなウールにオーガンジーの花をアプリケしたもの、ウールにポリウレタンのフィルムを張り付けた素材などが並ぶ。秋冬シーズンらしくファーも並ぶが、いずれも人工ファーを選んだ。フォーカスした国はスコットランド、トルコ、ルーマニアで、スコットランドからは伝統的タータンチェックと自然を想起させるジオメトリック柄、トルコからはオスマン調のフォークロア柄、ルーマニアからは田舎の素朴な生活の要素をピックアップし、自然を想起させる粗い生地とミックスした。カラーパレットは、古風なさび色、ジンジャー、マグネシウムブルー、豆乳の白、ミネラルグリーン、アイスグレーといったソフトでナチュラルな色にビタミンカラーのアクセントを利かせた。

“アルチザンの神髄”

 2つ目のテーマでは、打って変わって洗練されたミニマリズムを提案した。キーワードは“アルチザンの神髄”で、シンプルでクリーンな薄手の素材をベースに繊細な手仕事を加えたものなどを並べた。「ミニマリズムを追求すると生地のクオリティーが求められる。また、ミニマリズムを極端に表現すると透明(透ける素材)になるとも考えた」とファッダ委員長。縫い目を装飾にしたチュールや、ジオメトリック柄をプリントしたテクノメッシュ、薄手のダブルフェイスのカシミアやカシミヤシルク、ウールコットンに上塗り加工をした生地などが並んだ。フォーカスしたのは、韓国、スウェーデン、スイス。スウェーデンのモダンなインテリア、オリエンタルムードが漂う韓国のアート、ル・コルビュジェ(Le Corbusier)のジオメトリックな作品などを参照している。「ポイントは小さな装飾を手作業で行い、さらにその装飾をリピートしたデザインになっている点」とファッダ委員長は語る。カラーパレットは、リキッドイエロー、セメントグレー、クリスタルアクアマリンなど。

“テクノ・ロマンチック”

 3つ目の「あらゆるフェミニンな要素を重ねていくイメージ」で提案したキーワードは“テクノ・ロマンチック”。ベルギー、インドネシア、アゼルバイジャンにフォーカスし、フランドル派(フランドルはベルギー北部にあるオランダ語圏の地域)の絵画に描かれたレースや刺しゅう、インドネシアのデコラティブな民族衣装や伝統柄であるバティック、ヨーロッパとロシアの影響を受けているアゼルバイジャンの民族衣装の要素をピックアップした。ダマスク織、緞帳のようなブロケード織、メランコリックなゴブラン織、刺しゅうしたベルベットなどデコラティブな生地が並ぶ。クラシカルな印象で重厚感のある生地だけではなく、ポリエステルにメタルのディテールを加えた生地や、チュールやオーガンジーといった軽量素材も並ぶ。「テクノは刺しゅうやレースの技術を意味するが、昔ながらの技術だけではなく、ポリウレタンのジェルで表現したレースなどいろんなマテリアルを用いている点がポイント。さらにパールやビーズ、スパンコールで装飾し、新しい素材を提案した」という。カラーパレットはアンティーク感のある銅、バーガンディ、チョコレートなど。

 全体的に手仕事を生かした立体感のある生地が多くそろった。また、ファッショントレンドとしてここ数年続いている「多様性」のムードも継続。19年春夏メンズ・コレクションでも多くのブランドがあらゆる要素をミックスして「多様性」を表現したが、19-20年秋冬「ミラノ・ウニカ」では、それぞれの国が持つ特有のカルチャーを尊重し、さらにエコロジカルな視点を加えた提案が目立った。エコロジカルな視点は、今回「ミラノ・ウニカ」が大きく掲げたメッセージ「われわれのファッションは持続可能か?」にも見られ、さまざまなサステイナビリティー認証を得た製品が750点以上並んだ。サステイナブル製品を出展した企業も前回の53社から123社と大幅に増えている。

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