2012年にパリで誕生したナチュラルネイルブランド「キュア バザー(KURE BAZAAR)」。昨年に引き続き6月27日〜7月17日、ギンザ シックスでポップアップを開催し、7月6〜8日には創設者のクリスチャン・デイヴィッド(Christian David)が来店。来店客にネイルポリッシュの提案をしながら最新のコレクションを紹介した。来日したデイヴィッド創設者に、最新コレクションやネイルトレンドについて聞いた。
WWD:2018年サマーコレクションのインスピレーション源は?
クリスチャン・デイヴィッド(以下、デイヴィッド):18年サマーコレクションは、ヌードカラーにピンクやベージュをミックスしたシックな3色をそろえた。今パリで大きなトレンドはヌード。特にオペーク(不透明)なヌードが流行している。アクセサリーはカラフルに、ネイルはそれに合わせやすいカラーが今の気分だ。ただヌードだけだと面白くないので、そこにピンクやベージュを少し混ぜることでおしゃれに仕上がる。オペークである理由は、ロサンゼルスからヒントを得たこと。LAではオペークなホワイトネイルがとても人気。ただ、フランス人女性は真っ白より少しベージュがかった色の方を好むから、今回ヌードを選んだ。実はピンクとベージュをミックスした「ノマード」は、日本人女性が好きな色として、一つのインスピレーション源になっている。このように世界中で出会った女性や文化もクリエイションの刺激になっている。
WWD:新色を作る際、どこから着想を得るのか?
デイヴィッド:「キュア バザー」は現在、パリを筆頭にミラノやロンドンのファッション・ウイークで多くのブランドのネイルを手掛けており、それが大きな着想源の一つ。今季は「ケンゾー(KENZO)」「ジャンポール・ゴルチエ(JEAN PAUL GAULTIER)」「ステラ マッカートニー(STELLA McCARTNEY)」などを手掛けた。ファッション・ウイークはデザイナーと密に連携し、ゼロから新しいシェードを作ることもあれば、既存色から選んでデザインを作り上げることもあったりしてとてもエキサイティング。普段できないような派手なデザインもできるから楽しい。例えば「ケンゾー」のショーには、爪に小さなを開けてそこにジュエルをぶら下げた大胆なデザインにした。
WWD:ファッションウイークのトレンドは製品に反映されている?
デイヴィッド:その通り。ファッション・ウイークが終わったらすぐにラボに行って、次のシーズンの新色を作り始める。他ブランドだと製品開発に1年半から2年がかかることも多いが、われわれのような小規模なブランドだとそれが6カ月でできてしまう。だからファッション・ウイークで見たトレンドを分析した後、洋服が店頭に並ぶのと同じタイミングで新色を発売することができ、ファッションとの連動性が高いのが一つの強みだ。ビューティは、ファッションと融合するからこそ魅力があると思う。
WWD:日本人女性の美意識についてどう思うか?
デイヴィッド:日本人は、伝統と現代性の双方を大切にしているところが魅力的。伝統を守りつつも最新のトレンドに敏感な点は、フランス人女性と共通していると感じる。だから日本に来るたびに良い刺激になるんだ。
WWD:フランス人女性はどうなのか?
デイヴィッド:フランス人女性のビューティは、シンプルでイージー(簡単)でありながらシック。カトリーヌ・ドヌーヴ(Catherine Deneuve)もわれわれのクライアントの1人だが、彼女がよく言うのは、「家を出る時に必ずするのがリップとネイル」。ネイルをしているだけで身だしなみに気を使っていることが伝わるし、リップを塗るだけで表情が明るくなるから。フランス人女性にとって、それだけネイルとリップは重要。そして最近は、皆ジェルネイルからポリッシュに移行している。簡単で爪を傷めないし、ファッションのように頻繁に指先の色を変えておしゃれを楽しみたい女性にとっては、ポリッシュが最適なんだ。
WWD:ナチュラル志向についてどう思うか?
デイヴィッド:10年前は、オーガニックやナチュラル志向は大きなトレンドとして捉えられていたが、今はトレンドではなく現実。トレンドは変わったり衰退したりするもの。しかしいったんヘルシー志向になると、アンヘルシー(不健康)の方向に戻る人なんていないでしょう?環境問題も年々拡大する中、ナチュラル・オーガニック志向は流行ではなく、ライフスタイルの一部になる一方だ。それを皆求めているし、今後はより当たり前になってくる。パリでも今は通りごとにオーガニックスーパーマーケットがあるほどだ。最近はジェシカ・アルバ(Jessica Alba)やグウィネス・パルトロウ(Gwyneth Paltrow)、マリオン・コティヤール(Marion Cotillard)らセレブもクリーンなライフスタイルを称揚している。だから爪にも環境にも優しい、10フリーフォーミュラの “ヘルシーネイルポリッシュ”である 「キュア バザー」が多くの女性の支持を得ている。ヘルシーでありつつも、オーガニック製品にありがちな“地味で素朴”なイメージはなく、ファッションとコラボしたトレンディーなネイルブランドなんだ。
WWD:そもそも「キュア バザー」を立ち上げた理由は?
デイヴィッド:出張でニューヨークを訪れた際、爪の手入れをするためにネイルサロンに行ったら、ひどい光景を目にしたんだ。赤ちゃんの隣でジェルネイルをする母親や、古く汚いボトルのポリッシュが店内にずらっと並んでいて、衛生的とは言えない環境に衝撃を受けた。そこで、クリーンでナチュラルなネイルが必要!と強く思って立ち上げたんだ。「キュア バザー」の前に実は世界初のオーガニック香水ブランド「オノレ デ プレ(HONORE DES PRES)」を作ったんだけど、その時もその場で思い立ってすぐに行動したんだ。
WWD:今年創業6周年を迎えた今、次の6年はどう見ている?
デイヴィッド:創業から6年が経ち、今まで200万本以上のポリッシュを世界中で販売してきた。創業当時は想像もできなかったことだ。今はボン・マルシェ(BON MARCHE)やギャラリー・ラファイエット(GALERIES LAFAYETTE)などの百貨店では、「シャネル(CHANEL)」「ディオール(DIOR)」と同じ並びで店舗を構える唯一のナチュラル系ブランドなんだ。われわれは大きいグループ企業の傘下でもないし、独立経営している小規模なブランドとして大きな成果だと思っている。今後は急激に出店を増やす計画はないが、ナチュラルとラグジュアリー、ファッショナブルというブランドの中核となるものを大切にしながら、今後もより多くの女性にブランドの魅力を伝えていきたい。現在日本では約80店舗で取り扱いがあるが、いつかは日本にも直営店を出すのが夢だ。