「WWDジャパン」のご意見番、三浦彰・編集顧問が、最新号の中から気になるニュースをピックアップ。その見どころを解説します。今日は7月16日号から。
ビジョナリーHDの思惑とは?(P.5)
日本のメガネ業界は大激戦の様相を見せている。特に量販ではJINS(ジンズ)、ZOFF(インターメスティック)の2大勢力に加えてビジョナリーホールディングス(メガネスーパー)、眼鏡市場(メガネトップグループ)、三城などがシノギを削っている。ブランドものでは、ミラリジャパン(ルックスオティカの日本法人)、サフィロジャパンなどが入り乱れている状況である。ここで今回マルコリン(MARCOLIN)の日本代理店であるヴィジョナイズの全株取得に動いたのがビジョナリーホールディングスだ。量販系のメガネスーパーが中核である企業がブランド系に進出してきたわけだ。これはちょっと見ものではある。マルコリンはLVMHモエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON)と合弁会社ティリオス(THELIOS)を2017年に作っており、これからLVMHが擁するブランドの製造販売権の移管もあるのではないかということで、台風の目になる可能性のある企業。実際に「セリーヌ(CELINE)」のアイウエアのライセンス権がサフィロからティリオスに移っている。その日本代理店の株を買うということでなるほどと思わせる買収ではある。思惑通りに動くだろうか。
なぜブートレグ所持の古着屋が逮捕されたのか?(P.8)
いわゆるブートレグはファッション業界では、立件は難しいとばかり思っていたが、今回の逮捕に限らず、日本の特許庁で立体商標権を獲得した「エルメス(HERMES)」の“ケリー”や“バーキン”についても、その類似バッグを1万円などで販売していた地方の業者が逮捕されるなど、取り締まりが強まっている。暴力団などの大量ブートレグ製造・販売は商標権侵害のレッキとした犯罪だが、こうした「オアソビ品」にも捜査の手が伸びているということは、ふたたびラグジュアリーブランドが売れ始めている証左だとも思う。
PICK UP:「ミスターイット」(P.24)
前回の佐原愛美の「トゥ・エ・モン・トレゾア(TU ES MON TRESOR)」に続いて今号も、日本人の若手デザイナーの砂川卓也のブランド「ミスターイット(MISTER IT.)」の記事が面白かった。ファッション的知性(前回知性と根性と書いたが知性は偏差値のことではないので念のため)と根性がありそうな31歳の男だ。作るものは「メゾン マルジェラ(MAISON MARGIELA)」の影響下にあるが、いつ自分の色が出せるだろうか。展示会をのぞいてみたいと思った数少ないデザイナーだ。