1999年にスタートしたイタリア発のECサイト「ルイーザヴィアローマ(LUISA VIA ROMA)」をご存知だろうか。ネット通販でラグジュアリーを扱うECサイトは数多くあるが、店舗発のラグジュアリーECサイトとしてはかなりの古株だ。1930年代にルイーザ・ジャッキャンが創業したフィレンツェのブティックが起源となっており、現在も3代目による家族経営が続く。今では売り上げの90%がECサイト経由だが、売り上げなんと1億2000万ユーロ(約157億円)。従業員約200人の家族中心の経営企業にしてはかなり好調な数値といえるだろう。
「ヴェトモン(VETEMENTS)」や「プラダ(PRADA)」「サンローラン(SAINT LAURENT)」など、ラグジュアリーブランドを中心に約600ブランドを取り扱い、最近は特にストリートブランドが人気だという。家族経営から100億円企業に成長した同社の今後について、3代目のアンドレア・パンコネージ(ANDREA PANCONESI)=ルイーザヴィアローマ最高経営責任者(CEO)に話を聞いた。
WWD:創業時から変わらない企業理念はありますか。
アンドレア・パンコネージCEO(以下、アンドレア):「良い名声を保つこと」です。それが礎となり支えとなってくれます。
WWD:ここ最近、ラグジュアリーを扱うECサイトが増えていますが、御社の特徴、オリジナリティーは何ですか。
アンドレア:強みの一つは品ぞろえとセレクトの質です。顧客は自分が欲しいものを理解しています。そして、彼らには無駄な時間がありません。だから、顧客に目を向け、顧客が望む商品を提供することを意識しています。また、オリジナリティーという点では、今でも独立した家族経営だということもあるでしょう。
WWD:「LVRスニーカークラブ」という人気スニーカーを扱うコンテンツが人気だとか。
アンドレア:不定期でプレミアがつくほど人気のスニーカーだけを販売しているので、スニーカーマニアが集まります。日本でもすごく人気なんです。
WWD:ネット通販を始めたのが1999年とかなり早かったわけですが、そもそもECを始めた理由は?
アンドレア:それが、全くの偶然なんです。私の人生に起きた、あらゆる事がらと同じようにね(笑)。
WWD:取り扱うブランドと話していて、ECで販売されることはどのように捉えられていると感じますか。
アンドレア:たしかに、ECで販売するということにあまり前向きではないブランドもありました。当社では600を超えるブランドを取り扱っていますが、一人一人のデザイナーやそれぞれのブランドが尊重されるべきアイデンティティーや歴史を持っています。だからこそ、オンラインでしか販売していないブランドもあれば、実店舗でしか販売していないブランドもあるのです。
WWD:売り上げ1億ユーロを突破できた理由は何でしょうか。
アンドレア:われわれの規模はまだまだ小さいものです。それでも質を重視し、イタリアをルーツにしながら家族経営という自由度の中でやってきたことこそが、差別化につながり、成長できた理由だと思います。
WWD:今では90%近い売り上げがネット経由ですが、あらためて実店舗の意味とは何でしょうか。
アンドレア:実店舗は起源であり、その後築き上げてきた歴史の核となる部分です。私たちのアイデンティティーを視覚的に示す場所でもありますね。
WWD:ブランドとの限定アイテムを継続して作っていますが、その理由は?
アンドレア:われわれは「LVRエディション」と称して、DJのスティーヴ・アオキ(Steve Aoki)率いる「ディム マック(DIM MAK)」や「マルコ デ ヴィンチェンツォ(MARCO DE VINCENZO)」など、さまざまなジャンルの著名人、ブランドと限定コラボレーションを発表しています。狙いはコンテンポラリーな顧客層に向けて当社にしかない魅力的な何かを提供することです。ローンチ時にはイベントを開催することで、注目され、発信されることで露出強化にもつながります。
WWD:さらなる成長のためにネットではどういったことをしていく計画ですか。
アンドレア:商品力の強化です。オンラインでどういったブランドを販売するか、という選択をこれまで以上に慎重に行なうことが成長につながると考えています。
WWD:では、今後の店舗の戦略を教えてください。
アンドレア:現在フィレンツェに2店舗を持っていますが、来年同じフィレンツェに約1858平方メートルの多機能スペースをオープンする予定です。そこではウエアからアクセサリー、インテリア、コスメなどの幅広いアイテムを取り扱うとともに、バール(イタリア式カフェテリア)やレストラン、コワーキングスペース、ジムも併設します。これまでの全ての「LVRエディション」も再リリースし、特設コーナーで提供する予定です。
WWD:どのような位置付けの店舗になるのでしょうか。
アンドレア:この店舗はデジタル革命における第2段階のニーズに応える場所になるでしょう。SNSは若い世代の考え方に大きな影響を与えていますよね。携帯電話はスピーディーかつ効率的なコミュニケーションには向いていますが、“社会性を発展させる”という意味合いにおいて最良なツールだとは思いません。ですから、電子機器やSNSを利用しながらも、同時に人と人が実際にコミュニケーションできるフィジカルな空間を作り上げること。それが今後の大きなプロジェクトの一つです。ファッション好きな顧客が、同じ情熱を共有する誰かと実際に出会えるような場所になるでしょう。