ファッション

テラハ出身のデザイナー大畑ありさの勝利の方程式はインスタライブ

 「メゾンクルール(MAISON COULEUR)」と「サリア フェム(SARIA FEMME)」は、今インスタグラム上で話題の帽子とウエアのD2C(Direct to Consumer)ブランドだ。販売員やアパレルデザイナーを経験し、リアリティー番組「テラスハウス(TERRACE HOUSE)」への出演でも知られる大畑ありさが2016年に立ち上げた。

 現在、大畑が注力しているのは、週1回のインスタグラム上での動画ライブ配信。売り上げは1回の配信で100万円程にのぼり、配信後24時間の合計で約2万~3万人に視聴されているという。

 5月に出産したばかりだがすでに復職し、現在は仕事と育児に奮闘する大畑に、これまでのキャリアやモノ作りのこだわりについて聞いた。

WWD:ファッションのキャリアはどのようにスタートさせた?

大畑ありさ(以下、大畑):6年前に「シェルター(SHEL'TTER)」で販売員を経験し、少しプレス業務にも携わりました。当時、将来について店長に相談したら「このままだったら、ずっと販売員だよ」と言われたことが衝撃で、何か自分でできることはないのかと考えました。それからイベント制作会社のドラムカンが企画したドリームプロジェクト「カバーガール(Cover girl)」に応募しました。応募対象は読者モデルやブロガーだったのですが、私はどちらでもなかったので直談判して参加させてもらいました。商品を作って、販売して一番売れた人がブランドデビューできるというような内容で、私は1型2色でチュニックを作りました。グランプリを取り、同社に入社して「ファミュール(FAMUL)」というアパレルブランドを立ち上げて、モノ作りについて一から学びました。

WWD:どのように独立した?

大畑:ちょっとずつ貯めていた自己資金300万円で16年2月に会社を立ち上げ、翌月に「サリア フェム」「メゾン クルール」の2つの帽子ブランドをスタートしました。

WWD:アパレルブランドを経験したのに、なぜ帽子を?

大畑:ブランドを何かに特化させたいと思いました。もともと帽子が好きだったこともあり、工場や材料店を調べていくと知らない世界が広がっていました。浅草橋などで出会った帽子関係の方たちに話を聞くと、工場は年々減っている傾向にあることや、帽子のデザインは昔からあまり変わっていない、ということを知り、私ならアパレルで働いていたからこその新しいことが提案できるんじゃないかなと思って。別の要素をデザインに加えたいと帽子のデザインを始めました。今も東京と大阪などで、国内生産を行っています。

WWD:「サリア フェム」「メゾン クルール」はどのように差別化している?

大畑:「サリア フェム」は上質素材を使って、デザインは一生使っていただけるような帽子やMA-1風の帽子など、洋服からのアイデアをダイレクトに入れたデザイン性のある商品を作っています。価格も3万後半~5万後半と、ファッションが好きな方に向けています。「メゾン クルール」はウィメンズ、メンズもキッズのハットを1万2000円からセミオーダーができます。ブランド名も“色のアトリエ”という意味で、その人の色見つけてほしいという思いを込めました。セミオーダーは注文から1~2週でお届けしています。ただ、SNSなどで画像をアップする中で、洋服とのコーディネートや実際に着ていた服について問い合わせが多かったので、ブランドを全身で見せていきたいと考えるようになりました。そうして今年2月から「メゾン クルール」ではウエアも販売しています。

WWD:デザインはどのように行っている?

大畑:フレンチカジュアルの大枠を決めて社内の3人でデザインし、“全員が欲しい”と一致したものを商品化しています。私の場合は、1枚でコーディネートが完成するものを意識してデザインをしています。「何を着ていいのかわからない」というオシャレが苦手な子にも、簡単に1枚着るだけで“オシャレが楽しい”と思ってもらえるようなアイテムを目指していて、ワンピースやドッキングアイテムは人気商品です。

WWD:展示会と生産のスケジュールは?

大畑:4月と10月の年2回、展示会を行っています。現在は10月に発表する19年春夏商品に向けてサンプルを出しているところです。生産は展示会が終わった後もシーズンの差し込みアイテムを作り、だいたい年に4回デザインをしています。原価率はお客さまに寄り添っている方だと思います。実店舗を持っていない分、コストがかかっていないので、いい素材の商品をお手頃な価格で提供できています。

WWD:インスタグラムではライブ配信を活用して、商品紹介を行っている。

大畑:店舗がない中、「実物を見たいです」という問い合わせが多く、ポップアップショップを開いていないときはご案内できないので、商品をより詳しく紹介できる方法を模索していたのがきっかけです。今年ウエアをスタートしてから、週1のペースで配信するようにしています。カメラの前で話すのは難しいですが、見てくださる方が多いのでやりがいを感じています。特に質問にすぐ答えられて、商品に対しての不安要素を取り除くことができ、実店舗がないので、商品を動いて見せることができるのは最大の魅力です。今は、仕事帰りの方に見ていただける19時頃に、スタッフ3人で40~50分間配信をしています。2人がカメラの前に立って、デザインのこだわりや着心地を説明します。それぞれが同じアイテムの色違いを着たり、違うコーディネートで着たりと工夫をしています。もう1人はカメラを回しながら、コメント欄の質問を読み上げるだけでなく、すぐに着丈などのサイズの質問にも答えられるようにパソコンを操作できるようにしています。リハーサルも台本もなく、アドリブで話しているので緊張はしますが、自分がデザインしているので話す内容はたくさんあってあっという間に終わってしまうことが多く、楽しんでいます。

WWD:ライブ配信の効果は?

大畑:1回配信するごとに100万円程の売り上げがあります。配信後も24時間は再生することができ、合計で約2万~3万人に見ていただいています。

WWD:「テラスハウス」に出演したことは、ブランドにどう影響している?

大畑:独立した時は、ちょうど「テラスハウス」に出演していた時で、ほとんどの記憶がないほど忙しかったです(笑)。工場の開拓や展示会準備をしながら、帰宅後に撮影という日々でした。現在のインスタグラムは「テラスハウス」のファンの方が多くフォローしてくださり、集客には困りませんでした。一方、名前だけが先行して、しっかりと帽子や服を見てもらえないことがあり悩んだりもしましたが、マイナスな面もひっくるめて、今思えば番組に出演してよかったと思っています。

WWD:5月に出産したばかりで復職が早いが、どのように働いているのか?

大畑:もうすぐ2カ月なんですが、1カ月目で復職しました。現在は週3で出社し、子どもを職場に連れてきています。たまたまなのですが、アルバイトに保育士の経験がある子がいて、通常の出荷作業などの業務に加え、子どもも見てもらえる環境にあります。出社しない日は自宅作業で、彼女に家に来てもらっています。

WWD:今後の目標は?

大畑:店舗を持つことです。代官山や表参道エリア、集客力のある都心ファッションビルもいいなと思っています。また、社員のモチベーションアップとして、半年に1度社員のみんなで旅行を計画しています。前回は温泉でしたが、次はバリ島などのリゾート地に行きたいと思っています。いつかはヨーロッパに行けるよう、頑張ります!

関連タグの最新記事

最新号紹介

WWDJAPAN Weekly

2025年春夏ウィメンズリアルトレンド特集 もっと軽やかに、華やかに【WWDJAPAN BEAUTY付録:2024年下半期ベストコスメ発表】

百貨店、ファッションビルブランド、セレクトショップの2025年春夏の打ち出しが出そろった。ここ数年はベーシック回帰の流れが強かった国内リアルクローズ市場は、海外ランウエイを席巻した「ボーホー×ロマンチック」なムードに呼応し、今季は一気に華やかさを取り戻しそうな気配です。ただ、例年ますます厳しさを増す夏の暑さの中で、商品企画やMDの見直しも急務となっています。

詳細/購入はこちら

CONNECT WITH US モーニングダイジェスト
最新の業界ニュースを毎朝解説

前日のダイジェスト、読むべき業界ニュースを記者が選定し、解説を添えて毎朝お届けします(月曜〜金曜の平日配信、祝日・年末年始を除く)。 記事のアクセスランキングや週刊誌「WWDJAPAN Weekly」最新号も確認できます。

ご登録いただくと弊社のプライバシーポリシーに同意したことになります。 This site is protected by reCAPTCHA and the Google Privacy Policy and Terms of Service apply.

メルマガ会員の登録が完了しました。