「ロサンゼルスのシェアスクーターが大変なことになっている」という話をアメリカ帰りの後輩から聞いた。昨年末には全くなかった「バード(bird)」という電動スクーターが街のいたるところにあって、驚くほど多くの住民が利用しているのだそうだ。スマホアプリで最寄りのスクーターを見つけ、アプリを通じて開錠、利用後は乗り捨てる方式で、登録したクレジットカードから決済されるという仕組み。中距離は「ウーバー(Uber)」を使って短距離には「バード」を使うことが多いらしい。ちなみに、利用には本人確認のために免許証の撮影が必要なので、旅行客はなかなか利用できないらしい。
調べてみるとロサンゼルスはおろか、アメリカ全土でシェアスクーターが急増しているようだ。サンフランシスコでは2013年からシェアサイクル運営会社のMotivateと組んで「Ford Go Bike」という実証実験を続けてきたが、突如「バード」が無認可で運営を始め、市ともめながらもある程度の市民権を得たようだ。現在サンフランシスコは「ライムバイク(Lime Bike)」「スピン(Spin)」というシェアスクーターのスタートアップも参入を始めた“シェアスクーター激戦区”で、シェアサイクルを打ち負かしてしまった様相を呈している。
シェアスクーターが既存のシェアサイクルと異なる最大の点は、充電のためのステーションがなく、好きな場所で乗り捨てが可能な点だろう。少しの移動がしたいにもかかわらず、結局駐輪場を探して歩くのでは利便性が高いとは言えないわけで、好きな場所から好きな場所まで気軽に利用できるのは、タクシーや配車サービスの簡易版という位置付けになるわけだ。
もう一つ「バード」の面白いシステムが、一般ユーザーが充電をするという点だ。事前に“Charger”に登録をした一般ユーザーが自宅の前にあるスクーターを充電すると、毎回少額の資金を受け取れるという仕組みを導入している。昨年参入を発表したメルカリが展開するメルチャリでも、ユーザーが放置自転車を移動させることでポイントが付与される仕組みを導入しており、気持ちよく使うために利用者同士のインセンティブを用意するのはビジネスとして非常に巧妙だ。