今春夏、「セリーヌ(CELINE)」が絶好調だ。フィービー・ファイロ(Phoebe Philo)が2017年末にクリエイティブ・ディレクターを退任したため、彼女が手掛けるメーンコレクションは今春夏物が最後となる。それを受けてファンが店頭に駆け込んでいることに加え、これまで「セリーヌ」を買ったことがなかった客も「この機会に」と購入を決めているという。「セリーヌ」直営店を構える百貨店各社に1~6月の販売状況を聞いたところ、「売り上げは前年を大幅に上回った」という声が大勢だった。同時に、顧客からは「今後はどこで服を買えばいいの?」といった戸惑いの声も聞こえてくる。
伊勢丹新宿本店では、3階の「セリーヌ」ブティックの売り上げが前年比27%増。ウエアだけに絞ると、同50%近い伸びという。1階のバッグ売り場は同25%増で、「“ラゲージ”“トリオ”といったアイコンバッグを軸に、新作の“ビッグバッグ”や“ベルトバッグ”もよく売れた」。
松屋でも1階バッグ売り場が同18%増、2階ブティックが同11%増と共に好調だった。「ここ数年間、館全体として顧客作りに力を入れてきた成果として、雑貨に加えてウエアもしっかり売れるようになった」とし、ウエアで比較すると同28%増だ。「定番の50万円台のカシミヤコートや30万円台のウールコートが非常によく売れ、コートは前年の倍の売り上げだった」。
三越日本橋本店はウエアカテゴリーの比較で同35%増。「シルエットに定評のあるコート、ワイドパンツ、テーパードパンツをリピート買いする顧客や、この機会に新たに買う客が多かった」。大丸松坂屋百貨店の全店累計でも同6.3%増で、大丸東京店ではバッグカテゴリーの比較で同25%増だった。高島屋(3~6月)の全店累計ではバッグがけん引し、同23%増。「“ラゲージ”がなくなってしまうことを危惧して、駆け込み購入するケースが目立った」。
今季は絶好調ではあるものの、見方を変えれば、それは2019年春夏からエディ・スリマン(Hedi Slimane)がデザインする新しい「セリーヌ」への不安の表れでもある。18-19年秋冬はフィービーのデザインチームが手掛けるため大変革はないが、フィービーの路線とエディが「サンローラン(SAINT LAUREN)」で見せていた女性像とは大きく異なるだけに、「“セリーヌ難民”の受け皿になるブランドはどこか」といった話が各百貨店からは聞かれた。具体的に名前があがったのは「ジル・サンダー(JIL SANDER)」「ステラ マッカートニー(STELLA McCARTNEY)」「マックスマーラ(MAX MARA)」「ボッテガ・ヴェネタ(BOTTEGA VENETA)」など。
もちろん、新生「セリーヌ」に強く期待するという声も百貨店からはあがっている。「メンズもスタートし、ブランド全体としてパイの拡大ができる」「新イメージで新しい客が開拓できるだろう」といった声が聞かれた。