インスタグラムで人気のD2C(Direct to Consumer)ブランドとして知られる「フーフー(FOUFOU)」が5月から縫製職人とのマッチングサービス「ヌッテ(NUTTE)」を運営するステイト・オブ・マインドと協業し、生産管理や梱包、配送などの業務サポートを受けることで、ブランド規模を拡大している。「フーフー」は毎月新作をインスタグラムで発表・販売しているが、7月に発売したワンピースは5分で完売したほどの人気ぶり。これまで高坂マール・デザイナーが一人でブランドを運営してきたこともあり、受注生産のために注文から発送まで約3カ月を要していたが、協業によって注文後即配送を実現できたことも人気に拍車をかけた。
タッグを組んだ「ヌッテ」は2015年に創業。1500人の縫製職人と3万人の依頼者をつなぐプラットフォームだ。依頼者はEC専売ブランドのクリエイターからOEM企業、コレクションブランドのデザイナーまでさまざまで、依頼者が依頼内容を投稿し、縫製職人が入札する形式をとる。日々20〜30件の投稿があり、約7割が成約する状況だ。
「ヌッテ」の企業理念は「職人さんの活躍の場を作る」こと。もともと縫製職人だった伊藤悠平・社長がうまく職人に仕事が回る仕組みを作れないかと生み出したのが「ヌッテ」だった。佐藤杏里ステイト・オブ・マインド取締役は、「『ヌッテ』の特徴はロットが自由であること。そして、職人と依頼者のお互いが選ぶ権利を持つこと」と説明する。「職人は大抵下請け的なポジションになりがちで、自分では仕事を選べなかったり、横のつながりがないために適正価格がわからないといった問題を抱えていた」。少人数の工房でも、常に一定の案件が来ることは少なく、業務量の多寡が職人の負担になっていたという。「定期的な収入を得る目的で副業として利用していただくことが多く、忙しい時には仕事を受けない、そうでない職人が引き受けるといった職人さん同士のワーキングシェアが起きている」。
「フーフー」とステイト・オブ・マインドの協業は、小規模ブランドの生産体制をサポートすることでブランドの成長を手助けできるという考えから実験的に始まったもの。今後は両者の協業関係をブランドサポート事業として他ブランドへも拡大する予定で、ここにもやはり「ブランドを始めてみたい利用者をサポートすることで、職人にも仕事がいきわたり、モノ作りのサイクルが生まれる」という考えがあるようだ。
一方の高坂マール・デザイナーも、「『フーフー』の生産体制が整えば、今後はブランドを始めたい個人の方に自分のノウハウを伝えることにも注力したい。原価率などの裏側もオープンにするし、そもそもこうした情報を独占する時代ではないはず。むしろ競合をどんどん増やすことで、市場を盛り上げたい」と話す。情報をオープンにし、業務やノウハウをシェアしながら健全な市場を作っていきたい考えだ。フリマなど二次流通にばかり注目が集まるシェアリング・エコノミーだが、こうしたD2Cブランド市場では、モノ作りにもシェアの概念が根付き始めているようだ。