1980年代にプリンス(Prince)らミュージシャンの衣装を多く手掛けた衣装デザイナー、ルイス・ウェールズ(Louis Wells)の葬儀が8月4日に行われた。家族によれば、ウェールズは61歳で肺がんのため7月19日に死去したという。
バンドのアース・ウィンド・アンド・ファイアー(Earth, Wind & Fire)やシンガーソングライターのナタリー・コール(Natalie Cole)、R&B歌手のボビー・ブラウン(Bobby Brown)らをクライアントに抱えたウェールズだが、特に、相棒のヴォーン・テリー(Vaughn Terry)と衣装デザイナーのマリー・フランス(Marie France)と共に84年公開の映画「プリンス/パープル・レイン(Purple Rain)」のプリンスの衣装を手掛けたことで知られる。
米軍曹長の父と主婦の母のもと、米カリフォルニア州のアーウィン米軍基地で生まれ、10人の兄弟や姉妹と共に育てられた。イリノイ州のロック・アイランド高校に進学し、家庭科の授業ではクラスの他の女子よりも裁縫が上手だったという。12歳の時に家族の生計を支えると決心し、15歳で就職。その後ウェスタン・イリノイ大学(Western Illinois University)で服飾の学位を取得し、27歳の時にハリウッドの衣装デザイナー、ビル・フランク・ウィッテン(Bill Frank Whitten)のスタジオ、ワークルーム27(Workroom 27)で働き始め、相棒のテリーと80年代に出会った。エジプトにインスパイアされたアース・ウィンド・アンド・ファイアーのスピリチュアルな世界観をテリーと共に衣装で作り出し、一瞬で破けるタキシードからグリッターを施した衣装にチェンジできる衣装も生み出した。そんな中2人は、まだデビューしたてで名声もなかったプリンスの衣装を任された。
テリーは当時を振り返り「ウェールズは控えめで優しく、落ち着いていて繊細な人だった。僕ら2人は突然『このガキと働けよ。彼は将来ビッグになる』と言われてしぶしぶプリンスと働き始めた。出世道を外れたと思っていたが、プリンスはツアーバスで移動するような一大アーティストの卵だった。結局プリンスとは6年間働いた。プリンスの衣装を通じて僕たちは世界のファッションに影響を与えたと言ってもいいと思う。レザージャケットにスカーフ、タッセルにモーターバイク・スタイルはもちろん、ラッフルシャツ、パープルのトレンチコート、スリットが入ったフィットパンツ、2cmの大きなボタンにプリンスの影響を見ることができる。今もなお、ファッション界はこれらのアイテムを使っているんだ」と語った。