英リテールグループ、スポーツ ダイレクト(SPORTS DIRECT)の創業者で大富豪のマイク・アシュリー(Mike Ashley)が、英老舗百貨店ハウス・オブ・フレーザー(House of Fraser)の英国全店舗、ブランド、株式などの資産を9000万ポンド(約126億円)で買収した。ハウス・オブ・フレーザーは8月初めから新たな投資家を探していたが有力候補が見つからず、8月10日に日本の民事再生法に相当するイギリスの法律適用を申請。アシュリー=スポーツ ダイレクト創業者はこの破綻からわずか数時間後にハウス・オブ・フレーザーを救済した。
ハウス・オブ・フレーザーの有力投資会社候補として、中国のファッション・コングロマリット企業C・バナー(C. BANNER)や、すでに同社の株式を所有していたアシュリー=スポーツ ダイレクト創業者、そして「イエーガー(JAEGER)」と事業再生会社アルテリ(ALTERI)のオーナー、フィリップ・デイ(Philip Day)の3者がいた。しかしハウス・オブ・フレーザーの51%の株式を買収する商談を進めていたC・バナーは、自社株が香港株式市場で下落したことを理由に身を引いた。
ハウス・オブ・フレーザーは声明で、買収完了までの作業を総合コンサルティング企業のアーンスト&ヤング(ERNST & YOUNG)が担当すること、商業取引、店舗、オフィス運営などは通常通り行うことと、2017年1月期の総資産は9億4630万ポンド(約1324億円)、純利益は1470万ポンド(約20億5800万円)だったことを明らかにし、同社のアレックス・ウィリアムソン(Alex Williamson)最高経営責任者は「この買収により、169年の歴史があるハウス・オブ・フレーザーは安定し、財務力も回復するだろう」とコメントした。
英日刊紙「ザ・デイリー・テレグラフ(The Daily Telegraph)」は、アシュリー=スポーツ ダイレクト創業者はライバル企業が破綻するのを待ち、その後安く買収する手法をとってきたと報じている。
アシュリー=スポーツ ダイレクト創業者は、ラグジュアリー・ブランド「エージェント プロヴォカトゥール(AGENT PROVOCATEUR)」も同じ方法で買収している。また同氏が株式を多く所有する、ファッションショールームを運営するマーケティング企業フォー ホールディングス(FOUR HOLDINGS)はブランドを再スタートさせている。
同氏はハウス・オブ・フレーザーの将来についてまだコメントしていないが、自身のビジネスを高級路線に押し上げたいとかねてから表明しており、スポーツ ダイレクトを「スポーツのセルフリッジ(SELFRIDGES)にしたい」と語っていた。アシュリー=スポーツ ダイレクト創業者はフレンチ コネクション(FRENCH CONNECTION)、ディベンハムズ(DEBENHAMS)、JDスポーツ(JDスポーツ)などの株式も所有している。また、サッカーチームの「ニューカッスル・ユナイテッドFC(Newcastle United Football Club)」のオーナーでもある。