“スマホで読めるファッション雑誌”をコンセプトに2017年9月にスタートした女性向けウェブメディア「リリー(RiRy)」。雑誌を意識したレイアウトで、レトロ&ガーリーな“カワイイ”情報を発信し続けている同メディアを手掛けているのは、意外にも現在21歳の男子大学生、ヤン・スンジュン(楊承峻、Yang Seungjun)だ。「普段はストリートブランドをよく着ている」と語るイマドキの男子がなぜ、ガーリーな女性メディアを立ち上げたのか?彼の幼少時代の経験と共にその理由を探った。
WWD:もともと女性誌に興味があった?
ヤン・スンジュン「リリー」代表(以下、ヤン):そうですね。3歳年上の姉の影響が大きかったです。小学生時代から「セブンティーン(SEVENTEEN)」や「ノンノ(non-no)」、「キャンキャン(CanCam)」といった雑誌を読んで育ちました。中学時代は半身浴をしながら女性誌を読んだり、女性誌を参考に肌荒れのケアをしたりしていましたね(笑)。
WWD:なぜ「リリー」を立ち上げようと思った?
ヤン:小学校1年生の途中から高校時代まで海外で過ごしていたのですが、日本に戻ってきたらみんなが雑誌ではなく、スマホでインスタや「メリー」などからファッション情報を集めていました。高校時代までスマホを持っていなかった僕としては、その光景が衝撃的だったんです。さらに驚いたのが、姉に頼まれて「キャンキャン」を近くの書店に買いに行ったら「うちでは扱っていない」と言われたんですよ。一時代を築いた雑誌でも、もはや書店に置かれていない状態にとてもショックを受けました。でも、「ファッション誌にもまだ可能性はあるはず。その可能性を今の時代に合った形にしよう」と思い、去年の9月に“スマホで読めるファッション雑誌”として「リリー」を始めました。
WWD:雑誌のどこに「まだ可能性がある」と感じた?
ヤン:雑誌の持つ世界観や情報の質の高さ、コンテンツの“かわいさ”などです。「リリー」がターゲットとしている18~22歳の女性200人にウェブでアンケート調査をしたところ、ファッション誌を買う人は7%と低いのに対し、ファッション情報を探すときに最も参考にするのはファッション誌という回答が50%近くを占めていました。さらに、追加のアンケートで今のファッション誌に求められているものを聞くと「かわいいコンテンツ」や「見やすいデザイン」「いつでも、どこでも読める」といった回答が多かった。この結果を見て、「雑誌にはまだ魅力があるけど、情報の提供方法が今の時代に合っていない」と思ったんですよね。
WWD:その結果をもとに、「リリー」ではどうコンテンツを作っている?
ヤン:雑誌のようなコンテンツの作り方と情報の濃さは常に意識しています。出版社が運営するウェブメディアだと、少し情報を出し惜しみしている気がして、雑誌ほどの満足感がないな、と思ってしまうことが多いんですよね。もしかしたら紙媒体の雑誌とウェブの差別化を考えた結果、ウェブが薄くなってしまうのかもしれません。一方で「リリー」はモデルの選定から写真の撮り方、加工のしかたまでを意識し、雑誌を読む時の満足感をスマホで体現できるようにしています。作り方も紙の雑誌を参考にすることが多いですね。
WWD:コンテンツ作りにおけるこだわりは?
ヤン:オリジナルコンテンツはモデルを起用したシューティングを軸に組み立てています。SEO的な観点よりも、ユーザー満足度を優先していますね。ただ、新規ユーザーを取り込むためにキュレーション系の記事も作り、その記事の最後にオリジナルのコンテンツのリンクを貼って流入を促しています。
WWD:最近でバズった企画は?
ヤン:大学のミスコンに出場している方のコーディネート紹介などは、彼女たちが記事を拡散してくれることもあって見られています。
WWD:現状の組織体制は?
ヤン:立ち上げは一人でしたが、現在は6人で運用しています。システムは僕が一人で管理し、企画や撮影など、コンテンツの編集業務をみんなで行っています。僕が大まかに「これをやって欲しい」と提案して、それをもとに編集長的な立ち位置のスタッフが最終確認をしながら、コンテンツを作っていくのが基本的な流れです。
WWD:SNSは何を運用している?
ヤン:ターゲットとなる年齢層の方々がメーンで使っているツイッターとインスタグラムを中心に運用しています。インスタグラムは、昨年9月にスタートし現在は約2万フォロワー(8月中旬時点)と順調に増えています。
WWD:インスタでフォロワーを増やすコツは?
ヤン:投稿数は1日に3~5投稿ほど行い、オリジナルのハッシュタグやリポストなどで増やしています。今フォロワー数が伸びているアカウントを見ていると、オリジナルのハッシュタグを作り、そのタグをつけて投稿してくれた方の投稿をリポストすることでコミュニティーの輪を広げていくことが多いですね。
WWD:リポストする投稿の基準などはある?
ヤン:「リリー」の世界観に合った、ガーリー&ビンテージなコーディネートやカフェを載せることが多いです。そういった投稿を見つけたら、DMで「リポストしてもいいですか?」と聞いてOKをもらったらリポストしています。
WWD:今後「リリー」をどうしていきたい?
ヤン:まずはマネタイズです。そのためには法人化が必要なので、クラウドファンディングで資金調達をしました。資金が集まったので今後は法人化し、どう収益を上げていくかを考えていきます。紙媒体の発行やリアルなイベントの開催など、ウェブだけでなく立体的な取り組みも積極的に仕掛けていきたいです。