三代目J Soul Brothersの登坂広臣(HIROOMI TOSAKA)が監修するウエアコレクション「クレール ド ルナ(CLAIR DE LUNE)」はこのほど、東京・六本木のメルセデス ミー トウキョウ アップステアーズ(Mercedes me Tokyo UPSTAIRS)で2日間限定のポップアップストアをオープンした。昨年に続く2度目のポップアップストアで、今回は8月8日にリリースしたアルバム「FULL MOON」と連動した企画として限定コレクションを発売。今回は、「セルフメイド バイ ジャンフランコ ヴィレガス(SELF MADE BY GIANFRANCO VILLEGAS)」のジャンフランコ・ヴィレガス=デザイナーがインスタレーションに参加したり、Tシャツのワークショップを開催したりと、第1回目を上回る規模と仕掛けで、イベントを盛り上げた。事前の入店抽選に当選した2000人の男女が来店し、商品は完売。大盛況で幕を閉じた。三代目JSBやEXILEが所属するLDHが積極的に仕掛ける「ファッション × 音楽」について、登坂に聞いた。
WWD:なぜ、「クレール ド ルナ」と自身のアーティスト活動「FULL MOON」のアルバム発売を連動させようと思ったのか?
登坂広臣(以下、登坂):今はファッションブランドという見え方になっているかも知れませんが、「クレール ド ルナ」はファッションブランドとして作ったわけではありません。音楽とファッションは密接な関係にあって、音楽から派生しているファッションがあったり、アーティストが世界のファッションアイコンだったりしますが、今回は、音楽とファッションの関係を僕の中で表現したもの。「クレール ド ルナ」はブランド名でもプロジェクト名でもあります。ミュージックビデオもその1つですが、今回のポップアップストアは自分が作った音楽や世界観を伝える方法の1つだと考えています。
WWD:三代目JSBだとNAOTOもファッションブランドを手掛けているが、そのあたりとのすみ分けは?
登坂:NAOTOさんがファッションブランドをやっているのをそばで見ているので、自分はあくまでファッションを含めたカルチャーを発信するプロジェクトにしたいという思いがあります。漠然とですが今後は「クレール ド ルナ」という名前のもとで、ファッションに限らず食や空間、イベント、音楽など、何かカルチャーを発信していきたいです。ファッションもカルチャーという大きな枠の1つの要素ですし。例えば次の展開では違うお店をプロデュースしたりだとか、新しいグループの子たちをプロデュースするのもありだし、日本の音楽が世界に広く伝わっていくようなアワードを作ったり……。とにかく日本のカルチャー、日本のいいモノを集結させて世界に発信していく場所にしたいですね。
WWD:前回のポップアップストアもすごい反響だったと聞いた。
登坂:前回は初めてだったということもあって、自分のプロジェクトを知ってもらうきっかけになればいいなという感覚だったんですが、多くの人が洋服を手に取ってくださいました。今回は「バンソン(VANSON)」とコラボしたり、「セルフメイド(SELFMADE)」にインスタレーションに参加してもらったり、「ベンツ」で開催したり、いろいろなカルチャーを巻き込んでより大きくしていきたいと考えました。
WWD:以前、HIROさんを取材した際に「ファッションとエンタメはもっと一緒になって盛り上げていくべき」と話していたが、登坂さんはどう考えている?
登坂:本当にその通りだと思います。僕もファッションを好きになったきっかけが音楽でした。もちろん、逆の人もいると思いますし、純粋にファッションだけが好きという人もいると思います。でも僕は、学生時代に海外アーティストのミュージックビデオを見て、同じようなファッションを身に着けたいと思ったし、特に海外では音楽とファッションの距離が近くて、その衝撃は今でも覚えています。今はアーティストとして、HIROさんがやっているのとはちょっと違う角度で、音楽とファッションの関係を自分なりに表現していきたいと思っています。
WWD:歌やパフォーマンスなど、形のないモノを届ける時の秘訣は?
登坂:確かにツアーには高いお金を払って足を運んでいただきますが、純粋に僕たちが発信するものってモノとして何かをお渡しできるということではないんですよね。だから僕らが作っているエンターテインメントを、形じゃない気持ちの部分で受け取ってもらって、払った金額以上の価値を思い出として持って帰ってもらうしかない。だからすごく曖昧だし、コンディションが100%じゃなかったりすると、自分の中で葛藤することもあります。だけど、一生懸命自分のできることを信じてやるしかない。形もルールも、答えもない世界なので、“何があってもやり遂げる”みたいな信念を持つことが、見てくれている人には伝わるのかなと思っています。
WWD:今、音楽とファッションを融合した○○コンも多い。
登坂:そうですね。コンプレックスコンで言えば、ファレル(・ウィリアムス、Pharrell Williams)は世界を代表するファッションアイコンですし、普段から親交を持たせていただいていて、すごく刺激にもなるし、勉強にもなります。アーティストがカルチャーを発信するっていうのは正しい形というか、すごく憧れもあるし、そうすべき。僕もNIGOさんやVARBALさんのような日本を代表するカルチャーを発信している人たちを普段から見たり、何か一緒にプロジェクトをやらせていただいたりすると刺激をたくさん受けます。日本のカルチャーを世界に持っていく人たちと手をつなぎながら発信していけば、日本でファッションが好きな子も、音楽が好きな子ももっと増えるだろうと思います。そういう場をどんどん提供していきたいし、将来の夢でもありますね。
WWD:LDHにはそうそうたるメンバーが携わっているが、彼らからは何を教わっている?
登坂:例えばNIGOさんもVERBALさんも、こうした方がいいとは決して言わないけど、何か質問すると答えてくれたり、話していると自然と勉強になります。何かご一緒させていただきたくて、「こういうのできないですか?」と聞くと、それに対して「じゃあこういうのどう?」とか、「あの人知っているからつなげるよ」とか提案してくれる。勉強させてもらっているという感じもないし、僕に何か教えているという感覚もないと思うんですけど。NIGOさんともVARBALさんとも、年齢は違うけど、共通点は音楽とファッションだったりするので、世代を超えて話せる共通の話題というか。それがファッションの話をしよう、音楽の話をしようという感覚で会うわけではないんですけど、ご飯に行ったりすると、自然とその話になって、僕からしたら引き出しに入れたくなるような話が多いです。
WWD:世界のファッションの動きを見ていてどう思う?
登坂:僕はそんなにファッションには詳しくないんです。でもパリコレに行かせていただいたり、情報として見ていたりすると、ヴァージル(・アブロー、Virgil Abloh)とかキム(・ジョーンズ、Kim Jones)とか、昔から一緒に遊んでいた仲いい友達がファッションの世界でどんどん第一線に行っていて、そういうのを見ているとストリートカルチャーがどんどんメーンストリートに出ていっているなと感じます。音楽とファッションが、彼らが活躍することで本当に密接になったと、世界中の誰もが思っていることだと思います。これからがすごく楽しみですね。
WWD:最近気になる洋服は?
登坂:なんだろう、「ラフ・シモンズ(RAF SIMONS)」とか?もちろん、自分の好き嫌いはありますけど、これしか着ないみたいな考えは持たないようにしています。昔は自分なりのルールみたいなのもありましたが、今は視野が広がってフレキシブルに考えられるようになりました。ファッションに詳しい友達が周りにも多いので、そういう人の意見を聞きながら、あまり固い考えは音楽でもファッションでも捨てて。壁をなくすっていうのはそういうことでもあるのかなと思います。