ジジ・ハディッド(Gigi Hadid)、ベラ・ハディッド(Bella Hadid)、アリアナ・グランデ(Ariana Grande)、デムナ・ヴァザリア(Demna Gvasalia)まで大物セレブやデザイナーを顧客に抱える日本人ネイル・アーティストが、ニューヨークを拠点とするメイ・カワジリだ。レッドネイルの先端にリングでもう一つレッドネイルをつなげたものや、立体的な“おっぱいネイル”など、彼女はそのクリエイティブなスタイルでインスタグラムのネイルコミュニティーにバズを起こしてきた。
ネイリスト歴15年のカワジリだが、タトゥーアーティストを志していた時期もあった。しかし、初めて自分自身にタトゥーを施してすぐに、ネイルアートに方向転換したという。京都出身のカワジリは6年前にニューヨークに拠点を移し、顧客の数を増やしてきた。ネイルの施術料は200ドル(約2万2000円)だが、あちこちから引っ張りだこになり、現在は紹介でしか新客を受け付けていない。
ロウアー・マンハッタンにある彼女のスタジオはこぢんまりとしているが明るく、チェリーやレインボーカラーのアイテムで溢れており、インスピレーションが尽きる心配はなさそうだ。キッチンシンクの下の取っ手には「ロンシャン(LONGCHAMP)」と「ジェレミー スコット(JEREMY SCOTT)」のコラボのフェイクファーのトラベルバッグが掛けられ、フェザー、ハット、ジュエリー、チェーン、チャーム、プラスチックのティアラや「ミュウミュウ(MIUMIU)」のビジューヒールといったものが、リビングのラックには掛けられずに溢れている。ラックの隣のプラスチックの棚の中には、1000種以上のマニキュアが収められ、仕事場の壁にはこれまでカワジリが手掛けてきたネイルのサンプルが掛けられている。
カワジリ自身も彼女がデザインするネイルと同じく奇抜なパーソナリティーの持ち主で、ホットピンクのエクステにチェーンでバービー(Barbie)人形の靴をつなげ、アクアの1997年の曲「Barbie Girl」と共にインスタグラムで披露したこともある。「ドラマが大好き」と語り、また魚座であるカワジリは「魚座だから感情がコントロールできず、常に高いテンションでものづくりをしているの(笑)」と説明した。
日本のネイルシーンの偵察とネイルの材料や用具を調達するために頻繁に東京を訪れるというカワジリは、日本とアメリカのネイルカルチャーについて、「今、日本人は抽象的なデザインが好きだけど、アメリカ人はテーマがあるデザインが大好き。ビッグストーンやクレイジーなチャームとか、10年前に日本で流行っていたものが今アメリカで流行っている。若い女の子たちはたくさん食べる代わりにネイルのためにお金を貯める。痩せることはもちろん、ネイルも完璧にしたいの」と解説した。
休みの日にはライブやサイクリングを楽しみ、毎日のようにダウンタウンやミッドタウンで友人と飲んでいると話すカワジリは、自身の恋愛も含むプライベートもインスピレーション源にするという。「もしスケートボーダーと付き合ったら、スケートボードをテーマにしたい。そしたら彼がもっと私を好きになってくれるから」。
しかし、有名になるにつれてデザインをコピーされることも多くなった。「私が(他の人のデザインを)コピーしたり、他の人のインスタグラムを見ない限り大丈夫。私は他の人のインスタグラムを全く見ないように心掛けている。もし一度でも見てしまうとそのアイデアが頭の中に無意識に入ってしまうから。私はそうなりたくないし、いつもオリジナルで新しいものを作りたい」と心構えを語った。
カワジリはグーグル(GOOGLE)と協業してスクリーンセーバーを制作した他、表参道にも出店しているNY発のベーカリー、ドミニクアンセルベーカリー(DOMINIQUE ANSEL BAKERY)ともコラボし、ネイルアートを着想源にしたカップケーキを発売するなど、ネイル以外にも活躍の場を広げている。10万以上のフォロワー数から考えても、自身のネイルサロンやネイルブランドを立ち上げる可能性もありそうだが、「それも考えていたけど、旅行が好きだし、人に会うのも好きで、同じ場所にずっといるのは得意じゃない」とカワジリ。しかし、「もしかしたらネイルトラックならいいかも。タコスを販売するフードトラックみたいに!」と、旅行をしながらネイルもできる別のアイデアも思いついたようだ。
米MTVが主催する音楽の祭典「MTVビデオ・ミュージック・アワード(VMA)」で話題となった歴代のファッションをメイ・カワジリがネイルで表現