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「シュプリーム」が大抜擢した日本人イラストレーター 「詐欺かと思ったら本当だった」

 今までに数々のアーティストとタッグを組んできた「シュプリーム(SUPREME)」。日本人では「AKIRA」作者の大友克洋や写真家の荒木経惟(通称アラーキー)らそうそうたるアーティストを起用してきた。そんな「シュプリーム」が2018-19年秋冬コレクションとして、“顔のない女性”の絵を描く日本人イラストレーター、オートモアイの作品を使用したTシャツとスケートデッキを8月18日に発売した(オンラインでは25日から)。果たして、オートモアイとは何者なのか?なぜ、“顔のない女性”を描くのか?実は普段はアパレル企業に勤めているという彼女の今までの経歴や「シュプリーム」にイラストを提供した経緯からひも解く。

WWD:イラストを描き始めたきっかけは?

オートモアイ:明確な理由はあまりないのですが、衝動的に「描きたい」と思って2014年頃からイラストを描いて、タンブラー(TUMBLR)というSNSに作品を上げ始めました。ある程度作品が溜まった15年に画廊を借りて個展を開き、実際に「オートモアイ」という名前で活動を開始しました。

WWD:学生時代にはイラストは描かなかった?

オートモアイ:描いていませんでした。もしかしたら社会人になったことで学生の時よりも世界が狭くなったと感じ、何かをアウトプットしたいという気持ちが出てきたのかもしれません。

WWD:普段は会社員として働いている?

オートモアイ:インポートシューズの卸売りなどをする企業で働いています。会社が実は副業禁止なので内緒で活動していたのですが、今回の「シュプリーム」は大きな話だったので上司に報告し、今はギリギリ公認されて働いています(笑)。

WWD:会社員と並行して制作をするのはハードでは?

オートモアイ:かなりハードです。ただ、描くのが早いので、仕事で疲れていても土日で一気に描き上げています。クライアントワークだと、ラフを出す段階を飛ばして、9割方完成している作品を何案か出すこともあります。

WWD:どのような経緯で“顔のない女性”を描くようになったのか?

オートモアイ:活動当初から今の作風なのですが、自分でも理由はよく分かっていないんです(笑)。ただ、顔は描きたくなかった。

WWD:それはなぜ?

オートモアイ:顔を描くことで「〇〇に似ている」といった親近感を見る人に与えてしまうのが嫌で。あくまでドライなものにしたかった。それに作品は背景も一緒に描くので、顔を描くと情報量が多い。人ではなく、“人という記号”を描いている感覚に近いです。トイレの男女や信号機の人のマークと同じですね。私自身も作品の印象を左右しないよう、基本的には顔は出さないようにしています。

WWD:“顔のない女性”には何かイメージがある?

オートモアイ:“消費されていく匿名の20代女性”が着想源です。若い女性ってそれだけである程度価値があるじゃないですか。SNSで若くて可愛い女の子が次から次へと出ていく。でも、気づいたらみんな消えていく。そういった女性たちをイメージしています。個人的にインターネットやSNSをよく見ていることも影響しているのかもしれません。

WWD:初めてのクライアントワークはどういったものだった?

オートモアイ:恐らく私のタンブラーを見て連絡をくれたと思うのですが、海外の方からの依頼で「日本の食文化を紹介するジン(自費出版の雑誌)を作るから、寿司の絵を描いてくれ」というものでした。他にも顔のあるおじさんとか、ビールやハンバーガーとかのイラストもお願いされて「私じゃなくてもいいんじゃない?」と思ってしまいました(笑)。

WWD:現在はどういった仕事をしている?

オートモアイ:インディー系のバンドのTシャツなどですね。音楽が好きで、よくライブに行くので、そこでつながったバンドの方から知人を介して依頼が来ることが多いです。

WWD:活動開始の時からイラストで収入を得るつもりだった?

オートモアイ:そうですね。ただ、友人のイラストレーターたちが売れっ子のように見えていても収入が不安定で苦しそうだったので、自分には難しいのかもとも思っていました。最初は個展で払った会場代だけは意地でも稼いで、活動を続けていく土台を作ろうとだけ決めてました。

WWD:初めて個展を開いた際、自信はあった?

オートモアイ:自信はなかったんですけど、ツイッターで3000フォロワーくらいはいたので、毎日告知をしていたら人が来るんじゃないか、と期待はしていました。実際ある程度人も来て、作品も売れたので会場代はペイできました。

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