ファッション

人気アートディレクターの吉田ユニが語る仕事のこだわり ミッキー × ラフォーレ原宿のビジュアルを担当

 売れっ子アートディレクターの吉田ユニは、ラフォーレ原宿で9月24日まで開催中のミッキーマウス(以下、ミッキー)のスクリーンデビュー90周年を記念したイベント「Disney MICKEY MOUSE 90th ANNIVERSARY COLLECTION | Laforet HARAJUKU」でキービジュアルを手掛けている。お祝いのダンスをする2人の女の子のスカートの跳ねた裾がミッキーとミニーマウス(以下、ミニー)のシルエットになっているというもの。

 また吉田は、ラフォーレ原宿2階CONTAINERを会場にしたポップアップショップのクリエイターによる作品展示スペースでは、ミッキーとミニーの顔をかたどり、耳の部分に花を飾ることができるフラワーベース(27万円)を展示販売している。イベントを訪れた吉田に、今回のビジュアルの制作にまつわる話から仕事へのこだわりなどを聞いた。

WWD:ビジュアルはどのように制作しましたか?

吉田ユニ・アートディレクター(以下、吉田):今年はミッキーの90周年ということで、さまざまな場所でミッキーのビジュアルが登場するため、そこに埋もれないビジュアルを目指しました。ラフォーレ原宿の“ファッションらしさ”と“ミッキーらしさ”をバランスよく出したいと考えました。お祝いのダンスをしている女の子2人のスカートがひらっとしたときのドレープで、ミッキーとミニーを表現したいと思い、スカートの裾に細いワイヤーを入れて形を作ってテグスで吊るしました。立体なので、手元で完璧に形を作れても、角度で見え方が変わってしまいます。カメラを覗きながら、撮って、調整しての繰り返しで、かなり時間がかかりました。ちなみに、ドレスはよく一緒に仕事をしているスタイリストの相澤樹さんにお願いしました。

WWD:ミッキーとミニーをかたどった花瓶もユニークですね。

吉田:展示販売をすると聞き、飾っていて映えるものを作ろうと思いました。今回は90周年のお祝いでもあるのでお花のモチーフを取り入れました。お花を生けることで、ミッキーとミニーが完成するというのは楽しいかなと。本来はたくさん作っていろんな方の手に届く商品にしたかったのですが、結果的に一点モノになってしまいました。高くなってしまったので、売れずにずっとラフォーレに飾られていたらどうしよう……と思っています。購入していただけるとしたら、ミッキーとミニーのマニアの方ですかね。生花で丸い耳の形を作るのはかなり難しいことですが、花を生けない方でもドライフラワーや造花で丸いお花を作って、飾っていただけたらと思います。

WWD:何かミッキーにまつわる思い出はありますか?

吉田:特別なものはないですが、ディズニーキャラクターの中でもミッキーとミニーが一番好きです。ミッキーはアイコンとしてデザイン性がとても高く、こうやってデザインに携われるのはとても光栄なことです。インスタグラム(@yuni_yoshida)に作品をアップした際には、海外からの反応もありました。

WWD:キャラクターをデザインする際に気を付けていることは何ですか?

吉田:特にコラボレーションでは、キャラクター側(今回はディズニー)とコラボする側(今回はラフォーレ原宿)の両方がハッピーになるものを目指していますが、その最良のポイントを探すのは難しいことです。キャラクターのファンの方にも喜んでもらえるものにしたいと思っています。そのキャラクターのよさを消さないように気を付けながら、「今までこんなビジュアル見たことない!」という驚きもあるような、多方面をケアしなければならないですね。また、その対象物がこれまでどういう流れを経てきたのか、今どういう状況に置かれていて、今後どういう方向へ進んでいくのか、ということをリサーチするようにしています。うまい流れができているのであれば、その流れに乗ってよりよくする方法を考え、今までの流れがあまりよくなかったら、どのようによくしていけるか、ということを意識するようにしています。そうすることで、作っていくものがより明確になることもあります。

WWD:ラフォーレ原宿とは多く仕事をしてきていますが、毎回どのようにアイデアを出していますか?

吉田:テーマとキャンペーンの概要を教えてもらうだけで、自由に制作をさせていただいています。ラフォーレは数多くのクリエイターと協業をされているので、クリエイションへの理解とリスペクトを持っていると感じます。

WWD:今回のビジュアルもそうですが、CGには頼らずリアルで表現する理由は?

吉田:特に「CGじゃない」と言いたい訳ではなくて、私にはこのやり方が合っていると思っています。自分が想像できる作り方であり、仕上がりのビジュアルには人間味や温かみが感じられると思うので、それが好きなんです。あとは実際に自分の手を加えられて、想像していたものに近づけられます。また手を動かすことで気が付くことも多く、そういった発見を大事にしたいと思っています。

WWD:吉田さんのビジュアルは、広告として多くの人の目に留まるような仕掛けがありながら、作家性も感じられます。その2つをどのように両立させている?

吉田:せっかく作るならば自分にしかできないものにしたいけれど、自分のカラーを出そうという思いはありません。ちょっと変なんですけど、私がやったということはバレたくないんです(笑)。毎回いつもとは違うものを作っているつもりなのですが、「これユニちゃんっぽいよね」って言われると、うれしいことですが、ちょっと悔しかったり。新しいものを人に見せたいという思いと、自分も見てみたいという思いが強く、常に新しいアイデアを出していきたいんです。

WWD:アシスタントは付けず1人で数多くの仕事をこなしています。仕事のマイルールはありますか?

吉田:基本的に休みはあんまりないかもしれません。わりと常に頭の中に仕事のことがあって、休まってないんですよね(笑)。何もないときに考えることはないですが、いろんな仕事を並行して動かしているので、ずっと考えています。

WWD:仕事を受ける条件は何ですか?

吉田:一緒に面白いことができそうと感じたら。でも、基本的にはスケジュール次第ですかね(笑)。

WWD:スケジュール管理は?

吉田:手帳派です。手帳でも見開きでマンスリーになっているものじゃないとダメなんです。次の週を見渡すことができて、その日までにあと何日あるか数えやすいものを選んでいます。携帯ではできないです。

WWD:アートディレクターを目指す人にアドバイスをするとしたら?

吉田:ひたすら頑張るしかない(笑)というのはアドバイスではないかもしれません……が、私が今こうしてやってこれているのはこの仕事が好きだからだと思います。周りで活躍している人を見ると、本当に妥協がなかったり、諦めなかった人たちが多い。皆ピュアで、その仕事が純粋に好きであることが伝わってきますね。

WWD:今後やってみたいことはありますか?

吉田:目の前のことでいっぱいではありますが、常に新しいことはやっていきたいと思っています。今の仕事は若い子向けが多いので、老若男女に向けたものにもチャレンジしたり、ジャンルを問わずに挑戦したいです。

関連タグの最新記事

最新号紹介

WWDJAPAN Weekly

2025年春夏ウィメンズリアルトレンド特集 もっと軽やかに、華やかに【WWDJAPAN BEAUTY付録:2024年下半期ベストコスメ発表】

百貨店、ファッションビルブランド、セレクトショップの2025年春夏の打ち出しが出そろった。ここ数年はベーシック回帰の流れが強かった国内リアルクローズ市場は、海外ランウエイを席巻した「ボーホー×ロマンチック」なムードに呼応し、今季は一気に華やかさを取り戻しそうな気配です。ただ、例年ますます厳しさを増す夏の暑さの中で、商品企画やMDの見直しも急務となっています。

詳細/購入はこちら

CONNECT WITH US モーニングダイジェスト
最新の業界ニュースを毎朝解説

前日のダイジェスト、読むべき業界ニュースを記者が選定し、解説を添えて毎朝お届けします(月曜〜金曜の平日配信、祝日・年末年始を除く)。 記事のアクセスランキングや週刊誌「WWDJAPAN Weekly」最新号も確認できます。

ご登録いただくと弊社のプライバシーポリシーに同意したことになります。 This site is protected by reCAPTCHA and the Google Privacy Policy and Terms of Service apply.

メルマガ会員の登録が完了しました。