香港の大手繊維商社リー&フォン(LI & FUNG)は、物流部門を香港証券取引所に19年上期までに上場させると発表した。物流部門は急成長を続けており、2018年1〜6月期の売上高は前年同期比10.9%増の5億4300万ドル(約602億円)、営業利益にあたる中核利益(CORE OPERATING PROFIT)は同15.1%増の3800万ドル(約42億円)だった。同社は昨年からデジタル化を軸にした3カ年の構造改革を進めており、物流部門の上場で事業構造をスリム化し、米中の貿易摩擦などの環境変化に対応する狙いがある。
ただ、スペンサー・フォン(Spencer Fung)最高経営責任者は、対象品目が22兆円相当になる米中の貿易戦争について、同社への影響は売上高の2%以下と限定的に留まること、ホワイトハウスの保護貿易論者の脊髄反射的な思惑とは違い、約8000社の顧客は中国との取引から逃げ出していないことを指摘。「われわれは20〜30年にわたり50以上の国々の取引先とビジネスを行ってきたが、(中国以外では)中国生産と同等の生産能力のある地域がないことをよく知っている。現在の米中の緊張関係は、中国生産の減少というより、アパレル生産の地政学的再編を招くだけだ。中国からベトナム生産にシフトした米国企業に、発注量と金額で劣る一部の欧州企業ははじき飛ばされている。その一方、すでに当社の多くの中国の自社工場は(輸出ビジネスから)中国国内市場向けの生産を始めており、その需要はかなり高い」と語った。リー&フォンは世界最大のファッションおよび日用雑貨のサプライヤーの1つで、バングラデシュやベトナム、インド、パキスタン、ヨルダン、フィリピン、トルコ、中央アフリカなどでアパレルを生産。ウォルマート(WALMART)やコールズ(KOHL’S)などのメーンサプライヤーだ。
なお全社では売上高が同9.6%減の58億5000万ドル(約6493億円)、中核利益が同18.0%減の1億2400万ドル(約137億円)、純利益が同19.2%減の5000万ドル(約55億円)だった。