関税措置をめぐる米中の貿易摩擦が激化する中、中国最大手EC企業アリババ(ALIBABA)のジョセフ・ツァイ(Joseph Tsai)=エグゼクティブ・バイス・チェアマン(EVC)はアナリスト向けの会見で「当社は中国内需を中心にビジネスの成長を考えており、輸出品にはそれほど注力していない。中国政府は膨らむ中国国内の消費ニーズに応えるべく、輸入品政策については引き続き尽力していくだろう」と語った。
米中の緊張関係が注視されているが、中国にとって輸入先は米国だけではない。それを主張するように、中国政府は「第1回 中国国際輸入博覧会(CIIE2018)」を11月5~10日に上海で開催する。ツァイEVCによると、この博覧会は「世界中の輸入品が並ぶ世界最大の輸入品展」になり、「関税措置によって米国輸入品の価格が高騰すれば、中国国内の消費者は国産品や米国以外の輸入品に切り替えるだろう」とコメントした。さらに「貿易戦争で得をする者はいない。中国は輸出に頼らずとも経済を回せる状態にあり、中国製品に関税が課されても対抗できる。なによりも活発な中国内需こそが、中国経済の安定と市場の信認の要だ」と語った。同EVCによると、中国のGDP成長率の90%以上を占める国内消費と国内投資は3つの要因に支えられているという。「1つは賃金上昇に伴う中産階級の消費者人口の増加、次に高い貯蓄率が証明する一般家庭の健全な財政状況、そして消費者のクレジット利用の拡大だ」という。政府の支援政策の下、消費者はアリババの決済サービス「アリペイ(Alipay)」などのクレジットを利用しやすい環境にある。
アリババの年間利用ユーザー数は5億7600万に達した。その多くが定期利用者であり、平均年間注文数は90回で、16種類の製品カテゴリーから購入しているという。また同社は今月初めにVIPサービスを導入した。ダニエル・チャン(Daniel Zhang)最高経営責任者によるとこのサービスは、小売ECサイトで利用できる割引特典やローカル地域でのフードデリバリー、オンラインムービー鑑賞チケット、ビデオや音楽のストリーミングコンテンツなど88種類ものサービスを提供するという。このVIPサービスを利用する消費者を狙い、多くのブランドがビジネス参入に強い興味を持っているという。またマギー・ウー(Maggie Wu)最高財務責任者によると、アリババは自社のクラウド・コンピューティングとエンターテインメント事業の収益が伸びており、堅調なキャッシュフローを強みに引き続き戦略的にテクノロジーに投資していくという。