中国の大手ECサイト「JDドットコム(JD.com)」のリチャード・リュー(Richard Liu)創業者兼最高経営責任者(CEO)が出張先の米国・ミネアポリスで8月31日に、性的犯罪関与の疑いで1晩勾留された。翌9月1日午後に保釈金なしで釈放され、中国に戻った。リューCEOの弁護士は容疑を否認している。告訴理由の詳細は明らかになっていない。
2日に中国のSNSサイトの「ウェイボー・ドットコム(WEIBO.COM)」は、同CEOへの疑惑は誤りだと「JDドットコム」が主張していると掲載した。「JDドットコム」によると、同CEOへの容疑には根拠となる裏付けがないと警察は断定し、同CEOは通常業務に戻っているという。また、同CEOの弁護士アール・ゲイリー(Earl Gary)は3日、同CEOは無実であり、逮捕はないと明言しているとプレス向けに発表した。
同CEOは以前、オーストラリアの自宅でセクハラ事件が起こったときに、自身のビジネスと結婚生活への影響を懸念し名前が公表されないよう隠蔽しようとしたとされる。2015年に起こったその事件は、同CEO自宅でのパーティーに参加していた不動産開発業者がセクハラ容疑で告訴され、7つの訴因により有罪となった。同CEOは自身の名前が公表されないよう試みたが、今年7月にオーストラリアの裁判所に却下され、地元のメディアが同CEOの名を報じた。この件に関して、同CEOは罪に問われていない。
世界規模へのビジネス拡大に懸ける「JDドットコム」にとって、今回のスキャンダルは想定外だろう。同社は6月にはグーグル(GOOGLE)と戦略的提携を締結し、小売りソリューション共同開発のために5億5000万ドル(約605億円)の資金をグーグルから受けている。グーグルショッピングを介し、東南アジア、米国、ヨーロッパなどの地域へも販路拡大を予定しており、テンセント(TENCENT)やウォルマート(WALMART)とも戦略的提携を結んでいる。同社の17年12月期決算は初めて黒字へと転換したが、テクノロジー開発などへの大規模投資により18年1~6月期決算は赤字だった。